MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

マルチアンプ用アッテネーターの導入

 

 

 我が家では、Rey Audio RM-6Vを使っている頃から、デジタル・チャンネル・ディバイダーで周波数分割された高域と低域の信号を各々、高音用と低音用のアンプに接続して「2Way マルチアンプ・システム」を構成しています。

 現在使用中のデジタル・チャンネル・ディバイダーは、デジタル・イコライザーを使って室内音響を調整するのが主目的で購入した「TRINNOV ST-2 HiFi 」あるいは「DEQX HDP-4」に内蔵されているものです。

 この2機種共、入口から出口まで全行程がデジタル信号で処理され、最終段でD/A変換されたアナログ信号がパワーアンプに送り込まれるため、音量調整には中段にあるデジタル・ボリュームが使われています。 

 デジタル・ボリュームのメリットは音質劣化が少ないことと言われていますが、その反面、BGM的な小音量で鳴らした場合、せっかくのハイレゾ信号が、16bit あるいはそれ以下まで落ちてしまう、いわゆる「ビット落ち」してしまう可能性があります。 小音量時のビット落ちを回避するにはパワーアンプの入力を絞れば良いのですが、我が家の低域用パワーアンプ(以前はMark Levinson、現在はJeff Rowland)には入力アッテネータは付いていません。

 その改善案としては、デジタル・チャンネル・ディバイダーの出力側にアナログ・ボリュームを付ければ良いのですが、2Wayのマルチアンプ・システムの場合は4ch分、3Way マルチアンプの場合は6ch分のボリュームが必要となります。 これらのボリュームがリモコンで同時に動いて音量調節が可能なこと、さらに音質劣化の極力少ない高品質なボリュームを使用した製品が欲しい、、、そんな自分に都合の良い製品はほとんど販売されていません。

  そんな状況の中、今まで「Accuphase CX-260」という6chプリアンプをデジタル・チャンネル・ディバイダーの出力側に接続し、最終段での音量調整に使って来ました。

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Accuphase CX-260

 このCX-260は、不必要な回路はすべてバイパスさせ入口から出口までダイレクトにすることが可能で、我が家の様にマルチアンプ・システムの最終段の音量調整の目的として使うには好適な機種でした。

 このCX-260を購入する前にも「Tachyon - LOG-ATT」という製品があることをオーディオ仲間から聞きました。この製品も「2Way マルチアンプ用」なら27万円ほどのリーズナブルな価格でした。

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Tachyon - LOG-ATT

 その後もいろいろ情報を集めていたら、DEQXの輸入総代理店が独自開発の新製品を出したとの連絡をもらいました。 https://kurizz-labo.com/KL_product_ATT.html

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KL-AT-6D

 我が家では、TD-4001ドライバー用に金田式DCアンプ(アンバランス RCA)、TL-1601bウーファー用として Jeff Rowland 製のパワーアンプ(バランス XLR)を使っています。 

バランスとアンバランス混在でも使えるのかを確認したところ「KL-AT-6Dはアンバランス方式のATTを12個使用することで、バランス方式の6回路(3 way)を実現しているため、XLRとRCAが混在したシステムでも使えます」とのことでした。

 私はバランスとアンバランスに関して、説明を何回聞いても未だに理解不足ですが、DEQXの総輸入元がDEQXのために開発したのだから間違いはなかろう、ということで購入することにしました。(価格は34万円ほど)

 設計は日本国内ですが生産はヨーロッパとのこと、案の定、一ヶ月ほどの納期遅れでした。 通常の段ボール箱で届くのかと思っていたら、Jeff Rowland 社製のアンプ群を購入したことのある人なら既にお馴染みの、アルミ製アタッシュケースに入って届きました。

製品を眺めてみると、フロントパネルは18ミリ厚のアルミ製、シャーシは5ミリ厚のアルミ板と無垢アルミの角材で組み立てられていて、両サイドは35ミリ厚の無垢リアル・ウッド、、、なかなかのソリッド感、高級感があります。

リモコン自体もアルミの削り出しボディで、Jeff Rowland 製プリアンプ用リモコンの様に、ズッシリ感があります。 

天板を開けて中を覗いてみました。(単に興味本位、、、基板のことは分かりません)

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KL-AT-6D シャーシ内部

このKL-AT-6Dは単なるアッテネータですから、今まで使っていた Accuphase CX-260 と比較して音質が大きく変化することはないと思いますが、大きなメリットは、これでデジタル信号のビット落ちの心配は一切なくなり、アナログ・プリで楽しんでいた頃の気軽さでハイレゾの音楽データを楽しめることになった訳です。

 

 

 

 

 

 

TRINNOV ST-2 HiFi のアップデート

 

 

 昨日、私のブログに新しく書き込みがあり「TRINNOV ST-2 HiFi のバージョンはいくつですか?」との質問を頂きました。

 TRINNOV ST-2 HiFi を購入して以来、ソフトウェアもファームウェアも一度もアップデートした記憶はなく、毎月TRINNOV New Letter は届いているけれど、「Newアップデート」などという情報は一度も受け取ったことがありませんでした。

 Macを立ち上げて確認したら、我が家のST-2 HiFi のバージョンは「3.8.21」でしたが、少なくともこれが最新のバージョンでないことは確かです。

 そこでフランス本社あてにメールで問い合わせたら、Technical Support Manager なる人から「3.8.27が最新バージョンで、これは非常に安定したバージョンです。あなたのST-2 HiFiをネットに接続してくれたら、今すぐでもアップデートします。」との返信が来ました。

 東京が日曜日の午後1時だから、パリは朝6時頃のはず、、、日曜日のこんな時間に起きているのかな、などと心配しながら自分のST2 Hifiをネットに接続し、「接続した」と連絡すると「今、アップグレード中です、あと15分程度で終了します。」との連絡が来ました。

 一応安全をみて、1時間後に確認したら、、、

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アップデートされた

なるほど、確かに最新のバージョンが左下に表示され、右下の日付も変更されていました。

この日付を見ると、2021年5月16日の午前6時17分となっていますので、朝早くからサポートしてくれたのか、と考えると感心します。

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最新バージョンの確認

 今回のこれが正式なアップデート方法なのか、それとも本来はどこからかダウンロードして来て自分でアップデートするのか、聞いてみたけれどまだ返事はありません。

 何にしても、とにかく最新バージョンになったので、今回はこれでOKとします。

 

 

 

 

KinskyもKAZOOも調子が悪い

  

 

 以前使っていたアプリ「Chicken of the VNC」が動かない問題は、新たにMacOS純正の「Screen Sharing」を使うことで解決し、以前の様に、TRINNOVを自由に操作できる様になりました。

 しかし、また新しい問題が発生、、、iPad上でKinskyを立ち上げても、音楽ファイルのリストが全く表示されません。 KAZOOでも同様、曲目がリストアップされない状態です。

 我が家では、DST-01とDELA N1A(NAS)を接続し、これをTRINNOV ST-2 のデジタル入力に入れているのですが、全く曲目がリストアップされない原因は何なのか、、、やはりAuのルータが原因ではないか、、、しばらく考えました。

 ふと思い出したのは、2階のリビング・ルームでBGM用途に使っている、DENON DS-N9とBuffalo LS-420 NAS の組合せでの廉価版ネットワークオーディオ・システムがある、もしこれが正常に動いたなら、主原因は「Auのルータ」ではない、ということになります。

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 やってみたら、正常に動きました。これで「Auのルータ」が原因ではない、と判明しました。

それじゃ、何が悪いのか、、、DST-01なのか、それともDELA N1Aなのか、、、。

 DST-01に関してはSforzatoの小俣さんあてにメールで質問することにし、DELA N1Aに関しては「メルコシンクレッツ」のWebサイトに書き込みをしたところ、翌日に我が家に電話をくれました。

 DELAサポートの佐藤さんという人が「この電話で正常に動くまでサポートしますので、今から設定をやり直しましょう」と言ってくれて、DELA N1Aの再設定を開始しました。

 まず「工場出荷時の設定」に戻し、ここから深い階層まで進んで行ってDELA N1Aを動かしている「TWONKYサーバー」というソフトを一回外して、再度入れ直して再起動、また次の深い階層まで行って設定し直して再起動、、、自分では二度とできない、しかしメモを取る時間もないくらいの速さで、結局15分間くらいかけて再設定をして完了、、、でした。

 さて、iPadでKinskyを立ち上げてみると、今まで全く見えなかった音楽ファイルのリストがどんどん表示されていく、、、おおっ、やっと解決したんだな、、、。

佐藤さんによると「TWONKYサーバーを入れ直したので、今はDELA N1Aの内容を読み込んでいるところです。もう数分待って頂ければ、全ファイルがリストアップされます。」ということで、この問題は彼のサポートで解決できました。 

 メルコシンクレッツのサポートは、迅速で親身に対応してくれる、とても信頼に足るサポートチームだと言えます。この様な親身な信頼性の高いサポートをしてもらえると、次の機種もやっぱりDELAにしようか、と思えてきます。

 

 

 

 

Chicken of the VNC が動かない

 

 一年近く前に、エンクロージャーの吸音材を取り出して、3Dマイクを立てて周波数特性を測定したのを最後に、我が家のTRINNOV ST-2は、音楽を聴くだけの機器になっていました。

2月に入って、再びエンクロージャーの吸音材の量を調整してみたので、いつもの様にTRINNOVで測定を始めようとVNCビューアーアプリ「Chicken of the VNC」をクリックしたところ、正常に立ち上がらず「なぜ?」の状態が数日続いていました。

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何が原因なのか、思い当たるフシがありません、昨年2020年のイベントを思い返して考えてみましたが、、、

 (1) Audio用のスイッチング・ハブ HFS1100 UG を導入した

 (2) 年末に、Softbank --> Au に替えたので、ルーターが新機種に変更になった

 (3) 最新のMacOSが、それまでの32/64bit 兼用から、64bit 専用になった

   これによって「Chicken of the VNC」が適合しなくなったのか?

   しかし、iPadiPhone 用の「Chicken of the VNC」も同様

    だから64bit OS の問題ではなさそう、、、。

試しにAudio用と称するスイッチング・ハブを取り外して、以前のBaffalo製の汎用機に戻してたり、DST-01の外部接続の10MHzクロックを内部クロックに戻したり、ケーブル類も全部接続し直したりしましたが、何も解決しませんでした。

もしAu の新ルーターが不調だとすれば、PCやiPadのインターネット関係にも不具合が出るはずですが何も問題はないので、Au の新ルーターが原因ではなさそうです。

そうすると原因は、64bit 専用のOS となった「MacOS Big sur」かも知れません。

他ユーザーの方々はどうなんだろう、と考えましたが、まずはメーカーのサポートに相談することにしました。

今は午後10時だから、フランスとは時差が7時間、彼らはまだ勤務時間だろうと考え、パリのTRINNOV社にメールを出しました。案の定、15分も経たないうちに回答が来ました。「Chicken of the VNCはもう動かない。その代わり、MacOS Big surの中にある純正アプリScreen Sharingを立ち上げれば、問題なく動く」とのことでした。

MacOS>System>Libraly>CoreServices>Applications の中にありました。

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Screen Sharing

さて、設定してみると、今までのパスワードもそのまま使えて、「TRINNOV ST-2 Home画面」が表示されました。

やれやれ、やっと解決したよ、、、と思ったのも束の間、今度は、iPadでKinskyを立ち上げても、音楽ファイルのリストが表示されません。 KAZOOも同様で、NASに入っている音楽ファイルを読みに行っていない様子です。

この症状は、我が家でネットワーク・オーディオを始めて10年以上、初めての経験です。

 

 

フランスのオーディオ

 

 

 オーディオ仲間達とは「しばらくの間、お互いに訪問するのは避けましょう」と申し合わせたので、年初からオフ会はなし、もっぱらメールで情報のやりとりをしています。 日本では「外出自粛」の要請が出されていますが、ヨーロッパでは「外出禁止令」が出されていて、フランスでは全土に及ぶ「ロック・ダウン」が5月11日まで延長されるそうです。

 昨年、Rey Audio RM-6Vの件で知り合いになった友人で、シャンベリーという街に住んでいるフランス人がいるのですが、日本の様な外出自粛要請でなく「外出禁止令」が出されている彼の心境を考えると、メールがよく来るのも理解出来ます。

 フランスではレイオーディオに関しての情報が少ないとのことで、頼まれるたびに手持ちの写真や記事などいろいろ送ったりしています。(これで彼が不安やストレスを少しでも紛らわせてくれれば、と思います。)

 彼の方からはフランスのレコーディング・スタジオの話や、JDF、JMFアンプの情報、DAVISユニットの話、そしてレイオーディオRH-3ホーンの寸法そのままに、分厚いフィンランド・バーチ合板から3Dルーターで切削したウッドホーンの事など、なかなか日本では聞けない様な話をもらっています。

 このフィンランド・バーチから削り出した「RH-3の強化版(?)」は、我家でRM-6Vを使っていた時にいつも気になっていた「薄いサイドパネルの鳴き」が、このフランス製RH-3では分厚い無垢のバーチ材に強化されている点、私にとって非常に魅力的です。 価格や納期その他、確認中ですが、前述フランスの友人に案内を頼んで工場を見て来ようかと考えています。

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3Dルータ切削工程

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アッセンブリー工程

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スタジオモニターでの使用例

 

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エンクロージャ

 

 彼の話では、フランスにも「金田式DCアンプ」の同好会(ファンクラブ)の様な集いがあるとのことで、日本では30年以上前に主流だった「超高速安定化電源」を今でも苦労して製作しているとか、すでに製造中止になって入手が困難なFETやTRを探しているなど、我々日本のDCアンプファンがすでに忘れている状況がまだ続いている様子、とても興味深い話です。 

 フランスはロックダウンで外出禁止、、、東京は大丈夫なのか、とメールや電話で聞いて来ますが、こちらは東京都でも郊外の八王子市、彼はフレンチ・アルプスの山中にある街(アルベール・ビルの近く)なので、お互いに大都会よりは深刻な状況ではないはずです。

 しかしパリは依然として深刻な状況が続いている、、ロックダウンの状況がTVニュースで流れて来ますが、「TRINNOV NEWS」というニュースレターが送られて来ました。 TRINNOV社は、パリ12区のすぐ近くにあるとのこと、TVニュースで見るパリ市街の状況から考えて「大丈夫なのかな」と心配していました。

決して大企業ではないので、重要なメンバーが深刻な事態になったらどうするのか、と心配はしていましたが、どうやら大丈夫な様子です。

 

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TRINNOV NEWS から抜粋

    

   

 

エンクロージャーの調整(3)試聴

 

 

 2日間を費やしてエンクロージャー内部の吸音材を半分まで減らしてみたものの、TRINNOVの測定データには、期待した程には大きな差異は見られませんでした。

しかし聴感上の違いは考えていた以上に大きいです。「たかが吸音材」の調整で、こんなにも音が変わるのか、と驚きました。密閉箱のチューニングは楽しいです。

  まず最初の試聴用音源は、いつもの様に「WOOD / Brian Bromberg」の第1曲目の「The Saga of Harrison Crabfeathers(96 kHz/24bit)」です。 最初から音量レベルを上げてみました。 我家のオーディオルームは50Hz辺りに定在波のディップがあるのですが、それでも50Hz以下の低域が以前よりさらに重量感を増して、ベース・ソロのソリッドな低音が床を這って伝わって来る感覚があります。我が家のオーディオルームの床は、200ミリの基礎コンクリートの上に直接フローリングを貼り付けているので、構造上「低音が床を伝わって来る」という床鳴りはないはずですが、聴感上は足の裏に伝わる気がします。約10年間使っていたRey Audio RM-6Vでも、この様な感覚はなかったので、F特のデータで見る以上に低い周波数が再生されている、という印象です。 

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WOOD / Brian Bromberg

 2番目も低域試聴用の「Homage to Duke / Dave Grusin(44.1 kHz/16bit)」を聴いてみました。 1990年代の発売時に購入した年代モノの音源ですが、今でも低域試聴用として使っています。 リーダーのデイブ・グルーシンが敬愛するジャズの巨人デューク・エリントンに捧げたアルバムとのことで、エリントン楽団の定番曲が演奏されています。 その中で第8曲目にある名曲「C-Jam Blues」は、前述ブライアン・ブロンバーグがエレキ・ベースを演奏していて、ウッド・ベースとは趣の異なるソリッドでクールなエレキ・ベースの音がどの様に再生されるか、この曲は低域試聴用として使えます。 以前は聴いたことがなかった「より重量感の増した」低域になったことが一聴して分かる、ソリッドなエレキ・ベースの音が楽しめました。

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Homage to Duke / Dave Grusin

 試聴用音源3番目は「Another Time / Bill Evans(176 kHz/24bit)」です。これはライブ録音なので聴衆の拍手などが聞こえ、音質云々を抜きにしてジャズそのものを楽しめるアルバムです。 今回は低域の試聴用として、この中の第3曲目にある「Who Can I Turn To」を聴いてみます。 聴きどころは、2分10秒辺りから始まるエディ・ゴメスのベースソロです。かの歴史的なビル・エバンス・トリオの一翼を担ったスコット・ラファロ夭折の後、後継者として21歳で加入し12年間に渡って在籍することになる若きエディ・ゴメスのベース演奏は一聴の価値があります。このアルバムはいわゆる「オン・マイク」な録音なのですが、エディ・ゴメス特有の左手の弦がバチバチいうエッジの立ったサウンドでなく、ベースの胴鳴りの重量感がよく録られていて、今回の吸音材の調整の効果がはっきり確認できました。

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Another Time / Bill Evans

 次は「Soul Station / Hank Mobley(96 kHz/24bit)」、これは典型的なハードバップのアルバムで、オーディオ的な音の解像度や定位等を言う前に、1960年当時のジャズの熱い雰囲気やエネルギーがうまく再現されるかどうか、聴いていてハードバップが楽しめるかどうか、自分の判断基準として使っています。第2曲目の「This I dig of you」を聴いてみました。

 以前の吸音材フル充填した状態では、いわゆる「少し冷めた真面目なジャズ」でしたが、今回の改善によって、ハードバップ全盛期の熱い雰囲気がみごとに再生できることが分かりました。 昔、毎日の様にブルーノートのLPを聴いていた頃の、自分のJBL D130+075 システムのサウンドはこんな感じだったな、と思い出させる様な音に少し近づけた気がします。

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Soul Station / Hank Mobley

 ジャズの熱い雰囲気やエネルギーが良く再生できる様にはなっても、交響曲室内楽のヴァイオリンまでジャズっぽく荒々しくなっては困ります。自分がクラシックを聴く時は、ゆったりと柔らかく静かな音で音楽を楽しめればそれで十分、無理をしてまでハイエンドな音質を狙うことは望まないのですが、今回の吸音材の調整がどの様に影響するのか、自分のクラシック試聴用のアルバムを聴いてみました。 

 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が好きで、演奏者の異なるハイレゾ音源は複数持っています。この「Maxim Vengerov / Claudio Abbado / Berliner Philharmoniker(176 kHz/24bit)」はメンツが好きで演奏も素晴らしいのですが、ハイレゾ音源にもかかわらず高域が少々耳に付くので、DEQXの時代は高域を少し絞った右肩下がり特性の「Classic用EQ」で聴いていました。 もし今回これが綺麗に再生できる様になったら素晴らしいのだが、、、と試聴してみました。 オーディオ界では昔から「低域を改善すると中高域も良くなる」と言われて来ましたが、今回は久しぶりにそれを実感しました。 以前の様な耳に付く高音が改善され、ヴァイオリンの高域のツヤも心地よく再生されながら、オーケストラのFF時の沈み込む様な低域も重量感があります。 TRINNOVには、測定データに基づいて最適化された5種類のプリセット(Comfort、Natural、Neutral、Precision、Monitoring)が用意されています。 最高位のMonitoring は、F特、定位、群遅延など特性的にはベストですが、音がキツく冷たくなる傾向があり、我が家では今までクラシック鑑賞には不向きでした。 以前は Precision や Monitoring は高音が耳に付いてキツいので、一番耳障りの良い最下位の Comfort ばかりで聴いていたのですが、今回の改善で、Precision辺りでもクラシックを十分に楽しめる様になったのは大きな収穫でした。

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Claudio Abbado – Tchaikovsky Violin Concertos

 いつもの様に、この「Boston Symphony Chamber Players(192 kHz/24bit)」がうまく鳴れば、自分のクラシック再生はもう十分満足、という試聴(確認)用音源です。 前述の様に、今までは耳障りの良い最下位の Comfort ばかりで聴いていたこのアルバムも、今回からは中間的な Neutral やさらに高解像度の Precision でも楽しめる様になったことが確認できました。

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Boston Symphony Chamber Players

  最後に「打ち込み系サウンド」でのチェック用として、もう30年も前から使っている「Thriller / Michael Jackson(96 kHz/24bit)」を聴いてみました。以前は通常のCDでしたが、PCオーディオを始めた頃からハイレゾ音源にしました。 CD音源と比較すると、打ち込み系サウンド特有の迫力はなくなりましたが、マイケル・ジャクソンが声を発する直前に息を吸い込む臨場感は格段に向上しています。 いつも最初に聴き始める第6曲目の「Billie Jean」は、今回の吸音材の調整によって「ドスッ」という最初の低域パルス音が「重量感と迫力」を増したことが一聴して分かりました。

唯一気になる点としては、マイケルの声が以前より、ほんの少しクリアでない様に聴こえます。誰に聴かせても分からないであろう、いつも聴いている自分にしか気が付かない些細な違いかも知れません。 DEQX HDP-4の時と比較すると、クロスオーバーは同じ350Hzでも、TRINNOVはスロープが最大「24 dB/oct.」までなので、TD-4001とTL-1601bウーファーのオーバーラップが大きい、これが原因かも知れません。もうしばらくTRINNOVの調整を研究し、どうしても納得いかなければ、いよいよAccuphase DF-65を購入して「96 dB/oct.」を試してみるつもりです。

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Thriller / Michael Jackson

 最終的な確認として、リヤ・バッフルに手を当ててみると「ドスッ」という低域パルス音の衝撃によって、多少なりとも振動が感じられます。 箱鳴りを抑える対策設計として、フロント・バッフルとリヤ・バッフルを「直径30ミリ、全長650ミリの真鍮棒」8本で連結してあるのですが、8本合計32kgの真鍮棒の重量と42ミリ厚のロシアン・バーチ材でもウーファーからの衝撃に対して、多少なりとも振動が抑えられていないという状態、これは意外でした。 

しかし、天板と底板と側板にほとんど振動を感じられません。もしリヤ・バッフルに感じられる振動が、エンクロージャー内部の「空気の疎密波」に起因する振動だとすれば、天板、底板、側板にも同様に振動があるはずですが、これがない現状から推察すると、原因はウーファーのダイアフラム (117gr) の反力で奥行き方向にのみ発生しているものと考えられます。前後バッフルは板厚方向の弱い方向に振動衝撃を受けて振動しますが、天板、底板、側板はウーファーからの衝撃振動と同方向ですので、前後バッフルと異なり厚み方向の振動は極小となっている、と考察できます。

以上の考察から、エンクロージャーの強度については、まず現時点では合格とし、もうしばらく試聴を繰り返してチェックを続けるつもりです。

 

  

TRINNOV の改良(1)

  

  

 TRINNOV ST2 HiFi を購入する前、京王プラザホテルでオーディオ・フェアが開催された際に実物を聴きに行った時、この製品は通常のDSPを使わずに Linux ベースのPCを内蔵している製品である旨の説明を受けました。 しかし内部に空冷ファンがあることは知りませんでした。

 我家で使っている他のオーディオ機器とは異なり、TRINNOVの電源スイッチをONにすると、普段はほとんど気が付かない程度の極めて小さな「ファン・ノイズ」が聞こえるのを、購入後この部屋に設置して初めて気がつきました。 

 我家では、接続ケーブルを極力短く使う目的で、TRINNOVを4台のパワーアンプと共に左右スピーカーの間に設置しています。リスニング・ポイントからは3mほどの距離がありますので、このファン・ノイズは全く聞こえないのですが、このエリアに近づいた時に微小なファン・ノイズが聞こえて来ることがたまにあり、できることなら改善しておきたいと考えていました。

 スクリューを外してTRINNOV ST2 HiFi のボンネットを開けてみると、右側中央部に120ミリ角の大きな空冷ファンが水平方向に1基、そして左側に75ミリ角の中型空冷ファンが垂直方向に1基、取付けられています。

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TRINNOV ST2 HiFi 内部の冷却ファン2基

  右側中央部にある大きな120ミリ角の空冷ファンを取り外してみると、その下にインテル製CPU(Core i5)のためのアルミ製ヒートシンクがあります。すなわち右奥にあるのがLinux ベースのPCの基板で、その前が電源部と思われます。(下の写真)

 この120ミリ角のファンは「SCYTHE SY1225SL 12L」という型番で、スペックを調べてみると回転数は「500 rpm」でした。 国内で入手できる山洋電気パナソニックの「静音ファン」のスペックを参照すると、標準タイプが「2500 rpm」、ハーフスピードが「1900 rpm」、ロースピードが「1600 rpm」という回転数ですので、当該TRINNOV内蔵の120ミリ角ファンの「500 rpm」という回転数はかなり低い回転数で、これはオーディオ機器として使われる配慮から厳選された製品と思われます。 ファンノイズを低減するには回転数を下げるのが常道、しかし、これ以下の回転数にするくらいなら停止させてしまっても大きな問題はないだろう、と考えました。

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120ミリ角空冷ファンの下にインテル製CPU(Core i5

 左側にある75ミリ角の空冷ファンのすぐ横には一枚の基板があり、もしこれがDACであった場合を想定し、テストとして1時間ほど音楽データを再生しながら温度を確認していましたが、前述Linux ベースPCの基板と同様に、1時間経過後でも人肌程度の温度までしか上昇しませんでした。 もしこれがDAC基板で強制空冷を必要とする場合は、気流を導く特別な冷却ダクトを取り付けるはずですが現状では何もないので、この75ミリ角の空冷ファンはシャーシ内部に溜まった熱気を単に外部に放出するのが主目的で、限られたエリアを強制空冷する目的ではないのだろう、と考えました。

 この2基の空冷ファンを停止させた場合のリスクとしては、キャリブレーションが完了した直後から開始される3分間ほどの解析演算プロセスが、おそらく当該CPUに一番負荷がかかるはずですので、室温の高い環境での温度上昇でCPUがハングアップして解析演算が停止するとか、大きなデジタル・ノイズが発生する、などの問題が考えられます。(もしフランス本社にメールで問い合わせたとしても、ユーザーがボンネットを開けて2基のファンを停止させること、これを承認する訳はないと思われますので、聞かないことにします。)

 以上の考察から、今回は両方の空冷ファンの電源ケーブルを外して、2基とも停止させるという改善策を実行することにしました。 しばらく様子を見るつもりです。

 

P.S.

 本機の120ミリ角の大きな空冷ファンの固定方法は、遠いフランスからの距離を考えると輸送中の振動衝撃に耐えられるのだろうか、と心配になる様な脆弱な設計です。 価格が110万円以上の製品なのだから、あと千円そこそこのコストをかければ、より信頼性の高い固定方法はいくらでも設計できるはずなのですが、このシャーシ構造全体を見回しても、他にも脆弱な設計は散見されます。 エレキ屋さんもソフト屋さんも優秀なのに、メカ設計はもっと頑張ってもらいたい、と言いたくなります。