MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

次期SPシステム(10)ホーン・ドライバー決定

 
 
 
 ウーファーをTAD製のTL-1601「b」に決めたので、ホーン・ドライバーは同じくTAD製にします。 TAD製のドライバーということになれば選択肢は 1990年代初頭に発表されて以来レイオーディオ製ラージモニターやパイオニアExclusive SPシステムに使用されて来た「TD-4001」か、その次世代モデルとなる「TD-4003」のどちらかです。
 

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TD-4001 TD-4003
 過去に一度、「TD-4003の新古品(未使用)」の話をもらいましたが、当時はレイオーディオRM-6Vが我が家にあったので、中にあるTD-4001を外してそっくりTD-4003置き換えるのは簡単ではないはず、RM-6Vのエンクロージャー内部にあるドライバー・ホルダーを改造して全長も最大径も異なるTD-4003を正確にマウントさせるのは容易ではないだろう等々いろいろ考えて、結局購入するのは諦めた経緯があります。
 
 レイオーディオRM-6Vを手放した現在、特注して製作中のエンクロージャーの「上に置くだけ」を前提に、もう一度「TD-4003」の購入を検討してみました。
昨年の最終通達で「生産中止」が決定されましたので、市場在庫の新品を探すか、状態の良い中古品を探すしか方法はありません。
 
 下記はTD-4001とTD-4003のスペックの比較です。 外形寸法やスロート径その他、先代のTD-4001とは容易には置き換えがきかない大きな差異があります。補修用振動板の部品番号も異なりますので、ボイスコイル口径は同一でもダイアフラムは実質的には異なった部品と思われます。
 
イメージ 2
 
 下記、TD-4003の断面図を見てすぐに分かるのが、フェイジング・プラグの形状が先代 TD-4001(5スリット)や本家JBL 375(4スリット)など、Western Electric 時代からの伝統的な形状とは全く異なる新しい設計となっていることです。 鋭利な部分が少ないこの形状なら機械加工の精度も出しやすいし、強度的にも有利なので「鳴き」が少ないであろうことは容易に想像できます。 下にある先代TD-4001の断面図と比較すると、形状の差異が良く理解できます。
 フェイジング・プラグの材質はTD-4001がプラスティック系の材料だったのに対し、TD-4003は「アルミ材」ということですので、質量は2倍以上になったはずです。 
 そしてバック・キャビティの容量も十分に確保されているのが分かります。
先代 TD-4001の基本設計をベースにさらなる改良を施した新しい設計、「よくぞ開発してくれた!」と賛辞を送りたくなる製品です。
 

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 音質的にどれくらいグレードアップしているのか、同一のホーンにTD-4001とTD-4003を取り換えながらの比較試聴は立ち会った経験がないので、残念ながら自分では判断できません。
周波数特性を見る限り、特徴的な2kHz辺りの盛り上がりが多少フラットになり、15Hz辺りがさらに延びながら滑らかにロールオフしている、といった程度、、、少なくとも先代より多少なりとも改良されているはずです。
 
 オーディオ初心者だった高校生の頃、西新宿の山水電気ショールームで初めて見た「JBL 375」の圧倒的な外観の迫力に驚かされました。「中身の高性能が外観にまで現れている」「見た瞬間に欲しくなる」という様なコメントがStereo Sound誌にも書かれていました。
「いつの日か、きっと自分も、、、」と心に誓った素晴らしい外観の迫力、同社のLE175やLE85ドライバーは小型でも同様の迫力と魅力があり、TADの先代 TD-4001ドライバーもこの魅力を持っています。 
 しかし、このTD-4003の外観デザインはどうしたのでしょう、前述の様に音響的な設計は素晴らしいのに、この不恰好な外観デザインに何の必然性があるのでしょうか。
 
 コスト面で将来的に不利なアルニコから新しいネオジウムへの改変は大いに歓迎、バック・キャビティの容積拡大も納得、、、音響的な設計は素晴らしいのに、何故にこんなに不恰好な形状にしたのか、、、TADに工業デザイナーはいないのでしょうか、このデザインの方が先代 TD-4001より素晴らしい、などと考える人がいるのでしょうか。
 
 下の写真、左側の先代TD-4001、右側がTD-4003、どちらが30年前に設計された製品か、どちらが新型なのか、、、TADのエンブレムがなかったら、同じ会社の製品とは思えない外観です。
 

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 なぜ2インチ・スロートでなく「1.5インチ・スロート」にしてしまったのか、、、現在でも世界中のスタジオで数多く使われているレイオーディオやExcllusive 2401に搭載されたTD-4001とは互換性がない、、、これで良いと考えて発売したのでしょうか。
 
 ネオジウム・マグネットにして磁気回路が小型になったからといってもスロートの口径「2インチ」は堅持できたはず、、、バック・キャビティの容積拡大を狙うならリヤ・カバーの全長を少し後ろに延ばせば済んだはず、、、なぜ外径を6ミリも小さくして互換性を無くしたのか、レイオーディオやExclusive 2401内部のドライバー・ホルダーを作り変えろと言うのか、、、設計者は何を考えていたのか、、、、TD-4001と完全な互換性を保っていれば、順当に旧型から新型への代替わりが行われ、昨年で生産中止に追い込まれたりはしなかったはず、、、等々、不平不満ばかりが募ってTAD社に文句を言いたくなります。
 
 高校生の時から50年間のパイオニアのファンの一人として、発表当時からのTADファンの一人として、フェイジング・プラグの設計が刷新されようが、高域の特製が良くなろうが、価格がいくらだろうが、このTD-4003、、、一目見た瞬間に欲しくなってしまったという様な製品とは違って、いくら眺めていても全然欲しくなって来ません。
 20年以上もTD-4001を愛用して来て、今回で3回目の買い替え、それでも今回もまた「TD-4001」が唯一の選択肢となりました。
 
 中古販売店に入荷した「TD-4001」は、PA環境で使われていたらしく傷みがあるものだったり、先約が何人もいて入荷待ちの状態だったり、なかなか納得のいく出物がありません。
そんな時、オークションで「TD-4001」を見つけました。 当方の確認事項は「ワンオーナー」であること、そしてTADオリジナルのダイアフラムであること、、、多少年月は経っていましたがキズはすくないとのこと、譲って頂きました。
 
 実物が届いて各部をチェックすると、プレートとターミナルに錆がありました。バック・キャビティを外してみると、錆はプレートの表だけで内部は錆びていませんでしたので、このままクリーニングして使えます。 ターミナルも少し磨けば問題ありませんが、今回は一つ試しに、TADに送り返してターミナルを交換してもらうと費用はどれくらいなのか、興味があったので見積をとってみました。
 

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 ターミナル交換だけなら部品を取り寄せて自分で修理、と考えましたが断られました。
宅急便で送るのではなく、世田谷区船橋のパイオニア・サービスセンターまで持ち込む必要があるとのこと、どうせ世田谷まで持って行くなら他の部分もチェックしてもらおうと考えました。
 
 マグネット関係に詳しい知人に聞いたところ、「アルニコの減磁は10年で数%」とのこと。 これはあくまでも計算上の数値であって使用環境にも影響されるらしいですが、本件のTD-4001は20年以上使っているとしたら「20年で10%近く??」くらい磁束密度が低下しているかも知れない、TD-4001の磁束密度は20000ガウス、10%減磁していたら18000ガウスしかない、、、それだったら「マグネット再着磁」も依頼してみたらどうか、と考えました。
 
 すぐに見積りが来て、「ターミナル交換+マグネット再着磁」の合計で「1万5千6百円(税別、1台)」で納期は1ヶ月とのこと、このコストで済むのなら精神衛生上もスッキリするし、早速お願いすることにして持ち込んで来ました。