MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

新しいSPシステム(2)

 
 
 昨年10月にレイオーディオRM-6Vを売却し、音楽がない状態がほぼ1年間続いて、やっと音が出る環境になりました。
 
 先日までDEQXのグラフィック・イコライザー調整に時間をかけ、昨年までのRM-6VのF特とほぼ同等の特性まで完成しました。 今回のエンクロージャーは私にとって初めての「密閉箱」、、、F特がRM-6Vと同等のレベルまで調整できたとしても、ショボイ低域しか出ないんじゃないか、固く苦しい低音でJazz再生には向かないんじゃないか、などと心配度100%でした。
 
 そこで、何はともあれ音楽を聴いてみました。 
まずは自分の試聴用定番、過去何十年間もアナログLP、CD、DVD-Audio、そしてSACDと聴き続けている「So What/Kind of Blue/Miles Davis (192kHz/24bit)」です。
 
 iPadのKinskyのプレーボタンをタップし、Paul ChambersのベースとBill Evansのピアノのリフが静かに始まった瞬間、「これ、低域(TL-1601b)のレベルが全然低い」と感じました。DEQXの測定データでは1年前のレイオーディオRM-6Vのデータとほぼ同じなのですが、聴感上のレベルがかなり低く感じました。そこで30~100Hzの帯域のレベルを「聴感上で満足」なところまで上げて行き、DEQXで測定データを取って確認すると、中高域に対して「+3dB」ほどレベルが上った状態でした。 RM-6Vの時は3dBも上げると低域が飽和してしまったのですが、今回の「密閉箱」では低域のF特と聴感上の量感がリニアに上昇していく、「密閉箱の初心者」にとっては不思議な、しかし望ましい現象でした。
低域が変われば中高域も変わる、、、しかしこの中高域も別に不満はない、、、当面このEQ設定でいくことにします。
 
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 次も、低域の試聴用の音源で「Wood/Brian Bromberg (96kHz/24bit)」です。
2002年のCD発売と同時に買って以来とても気に入って聴いているアルバムです。DVD-audio盤を買い込み、長年これを試聴用音源として使っています。Brian Brombergのアルバムはほとんど全部所有していますが、このアルバムは試聴用のみならずJazzそのものも十分楽しめるのでベストだと思っています。リーダーのBrianがベーシストなので、彼のアルバムはいつもベース・ソロが入っていて、このアルバムでも半数の曲がベース・ソロになっています。
 第1曲目の「The Saga of Harrison Crabfeathers」を聴いてみて、今回の密閉箱システムと、昨年までのレイオーディオRM-6Vとの違いがすぐに分かりました。 RM-6Vの少し長く響く低域、低域の信号がなくなっても少し長引く低域、これはベースの開放弦と胴鳴りだと思っていましたが、この密閉箱システムではもっと短く「ピタッ」と止まります。少し長めに続く低域は、RM-6Vの4本の太いダクトの共鳴音だったのかも知れません。Accuphase、Mark Levinson、Jeff Rowland と買い換えてみて、パワーアンプダンピングファクターで低域を締めようとトライしましたが、ある程度までが限界でした。長年つきあった「バスレフ方式」の限界だったのかも知れません。
良い経験をしたと同時に、今回の密閉箱システムへの変更は、決して失敗ではなかったと安心できそうです。
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 次はクラシック、、、主に音場感、臨場感の確認のため小編成の室内楽です。
長い間Jazzをメインに聴いている自分でも、最近、何か書物を読みながら聴くならコレ、と特に気に入っている一枚です。
 この試聴では低域だの中高域だのという前にまず、音場感、臨場感を聴いて、大型バーチカルツインから「普通の2Wayシステム」に換えた効果を知りたいと考えました。
 
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 ここ10年間、レイオーディオのバーチカルツインが再生する音像定位を聴いて来ました。 そして今日、オーディオ仲間の家を訪問して音を聴かせてもらって感じていた「上方向の音像定位」がこの部屋で鳴り始めました。
 小編成の室内楽を聴くには大型のバーチカルツインよりも今回のシステムの様な「普通の2Wayシステム」の方が良いのではないか、、、下側のウーファーウッドホーンの中心までの高さ(床面から900ミリ)までは同様なのですが、ウッドホーンのさらに上にウーファーがあったRM-6Vの場合と「普通の2Wayシステム」ではこんなに定位感が違う、、、低域が変われば中高域も変わる、といった音質の問題ではなく、上方向に広がる音像定位がまるで違う、、、と今更ながら驚きました。
 
 前述「上方向の音像定位」については、レイオーディオRM-6Vはこの部屋の天井からの反射をあまり感じさせない音場感でした。上下に配置された40cmウーファーの中心にウッドホーンが配置され、そのレイアウトの範囲内でRM-6Vが作り出す独特の音場感だったと思います。 今回製作した「普通の2Wayシステム」は音が上方まで広がるので天井に設置してある反射板の効果がもろに分かり、また全体の高さが低いのでエンクロージャー後方から両サイドに設置したサーロジック製反射パネルの効果がより鮮明になりました。
 
 ずいぶん以前、故菅野沖彦氏(オーディオ評論家)がレイオーディオ製のシングル・ウーファー構成「RM-11」とバーチカルツイン構成「RM-6V」の比較試聴記をStero Sound誌に書いていたのを覚えています。
 
 ーーー「RM-11の音場感はバーチカルツインよりも広がり感があって、悪く言えばファジー、良く言えば自然である。バーチカルツイン特有の高密度感やストイックな緊張感から解き放たれた開放感がある。音像のイメージも明確で快い。」ーーー
 
 当時は「なるほど、そういう違いがあるのか」という程度に読み流しただけでした。しかし、実際に10年間、自分の部屋でレイオーディオRM-6Vを使って来て、今回ここで「普通の2Wayシステム」を聴いた私の感想はまさにコレ!、オーディオ評論家の文章力はスゴイと思いました。
 
 レイオーディオRM-6Vは、バーチカルツイン方式によって、レコーディング・スタジオ内の壁や天井の影響を受け難い様に設計され、独特の音場を構築できるSPシステムだったのでしょう。
長い期間、バーチカルツインを自分の部屋に入れて使って来たオーナーだけが、無意識に「これがベスト」と感じていた奇異なインプレッションなのかも知れません。
 
 前述、故菅野沖彦氏の記事と同じ頃、Swing Journal誌にJazz評論家の寺島靖国氏がレイオーディオRM-6Vを購入した際の顛末が掲載されていて、これも参考に読ませてもらいました。 
 初めてレイオーディオの試聴に行った時、シングル・ウーファーRM-11が良いか、バーチカルツインのRM-6Vにしようかと迷っていた寺島さんに同行したイルンゴの楠本さんが「シングル・ウーファーで最高の音が出た時、バーチカルツインのRM-6Vならもっとスゴイ音が出たはずだと必ず思う」と言われて「即、バーチカルツインのRM-6Vに決めたよ」とのことでした。
 
 私もこれに影響を受けてバーチカルツインを購入したのですが、この独特の音場感に手を焼いたのか、あるいは飽きたのか、寺島さんも10年足らずでRM-6Vを手放して、他のSPシステムに乗り換えてしまいました。
 
 密閉箱システムの試聴は、ボーカルや古いロックなども聴いてみて、レイオーディオRM-6Vから「普通の2Wayシステム」への変更は、決して大きな方向違いではなかったと言えそうです。
 
 音質については、これからDEQXのグラフィック・イコライザーをチューニングしていけば、RM-6Vを超えることは十分可能であるという「匂い」がします。
そして、自分のオーディオの「終活」の観点から考えても、SPシステムは多少は小型(?)になり、自分で持ち運べない様な大きなパワーアンプ群はすべて処分したので、随分と身軽になったと思います。
 
 あとは、オーディオ仲間を招待し、イイのワルイのと意見を言ってもらって、チューニングを進めていく楽しみが始まります。