MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

新しいSPシステム(総括)

 
 
 今回の「新SPシステム」の製作プロジェクトは、長年続けて来た自分のオーディオの「終活」として始めました。 10年間愛用してきたレイオーディオRM-6Vを売却し、「終活」と呼ぶに相応しい小規模なSPシステムを目指したのですが、結果的にこれで「小規模なSPシステム」と言えるかどうか、幅と奥行きはほとんど同じ、しかし高さだけは半分になりました。 完成して数ヶ月経過した現時点で、この部屋で過去10年間、「煮たり焼いたり」して調整してきたレイオーディオRM-6Vのサウンドを凌駕できたかなとも感じられ、自分なりに満足できるレベルに仕上げられたと思います。
 
 そこで、今回の新SPシステム・プロジェクトの「失敗したポイント」、「注意すべきポイント」、「良かったポイント」をまとめて、次期プロジェクト(?)への参考資料を書いておくことにしました。
 
<失敗したポイント>
 SPエンクロージャー製作をどの業者に依頼すべきか、、、新製品の試聴会などで馴染みのあるオーディオ販売店に依頼しても無理そうなので、ここ10年くらいの間、アンプ関係製品を購入している「オーディオ専門の業者」に製作仲介を依頼したのですが、自分の見積額の2倍を超え、納期も不安定だったのでキャンセルしました。
 
 やはり何でも自分でやるのが一番、と7社に見積依頼を出し、各々から正式見積書が届きました。ベストな見積額は「37万円(エンクロージャー2台分)、材料費含、搬入費含」で、これは自分の見積額とほぼ同じでした。 各社の「時間単価」が違うのは当然ですが「行程時間」がほぼ同様に揃っていて、見積価格も各々リーズナブル、、、厳しい注文家具業界の競争で生き残っている業者はさすがでした。 
 本来なら絶滅したはずの生物が、絶海の孤島に生き残っている様な日本のオーディオ専門業者への発注は、自分の頭の中を一般社会の常識に戻し、今一度考え直してみるべきだと実感しました。
 
<注意すべきポイント>
 今回使った材料はロシアン・バーチでしたが、これは最初に発注した業者がロシアン・バーチの輸入元と組んでいただけの話、だから他方の選択肢「フィンランド・バーチ」の話は最初からありませんでした。
 
 バーチ材は一般のラワン合板と比べるとかなり重量があり、ほぼアピトン合板に匹敵しますが、外観的にはバーチ材の方が表面の木目と積層断面が美しく、粗雑なアピトンと比べて勝ります。
 
 ロシアン・バーチとフィンランド・バーチを比較すると、単位重量はほぼ同じ、積層数もほぼ同じで、価格も大差ありません。
 しかし、外観に関しては「フィンランド・バーチ」の方が圧倒的に綺麗です。ロシアン・バーチは積層断面に「空洞部分(下写真、青丸部分)」があります。 一般的に「巣(ス)」と言われている「空洞」の様な部分が点在しているのです。(粗悪な中国製のラワン合板にも見られる、欠陥です)
 
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 例えば、試作品のエンジンのクランクケース鋳造行程では「鋳巣」と呼ばれ、強度的にも振動的にも不利な状態で不良品扱いされます。 エンクロージャーの場合は鋳造製品ほど深刻ではありませんが、これがロシアン・バーチ4x8合板の中に10ケ所以上あります。これは合板を切断してみるまで分かりませんし、切断してしまっては返品もできません。
 
 ロシアン・バーチは合板の生産行程での品質管理が雑なのかも知れませんが、この状態では、パテで処理しても外観は改善されません。
よって、特にテーブルやエンクロージャーの「木口」で積層断面を見せるデザインには使えませんので、オーディオ用にはロシアン・バーチではなく「フィンランド・バーチ」を使った方が賢明だと思います。
 私のエンクロージャーの場合は、最初から木口にウォルナット無垢材を貼り付けるプランでしたので問題ありませんでした。
 
<良かったポイント>
 通常、SPエンクロージャー製作は「オーディオ専門のエンクロージャー屋」に依頼すると考えますが、今回は一般の注文家具を製作している「家具木工所」に依頼しました。前述の様にオーディオ専門業者からの見積書に呆れたからです。
 オーディオ専門と称する業者は、例えば「38cmウーファー用の350リッター密閉箱」というと即座に「50万円/1台」という「業界値段」を言って来る、、、「バスレフは15%増しです」と答えてくる、、、彼らは「行程時間の計算をしていない」「1時間当たりの単価も決めていない」のではないか、と感じ、実際の見積書の中身は金額だけで、詳細な工程見積もりはありませんでした。
 
 今回は一般の「注文家具木工所」数社に見積もりを依頼したところ、その見積金額はオーディオ専門と称する業者の半額以下であること、オーディオ専門業社を超える技術を持っていることも分かりました。
 注文家具会社の通常の顧客は一般人なので「こんな感じにして欲しい、こんな機能が欲しい」程度の抽象的な要望だけで家具を製作しています。 つまり注文主側は正式な図面を描けなくても全く問題はないということです。 注文主の要望を入れた「正式図面」を彼らがCADで清書するので、それで良いか、ここをもう少し、、、という様なキャッチボールを何回か行なえば正式な図面が完成し、注文主の望んだ通りのエンクロージャーが完成できることになります。
 
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 ちなみに上の一覧表は、今回私が実際に訪問して自分の図面を渡し、見積書を提出してくれた注文家具製作を生業とする木工所です。 これら木工所が相模原市に多くて八王子市に少ない理由は定かではありませんが、自宅から車で約1時間以内というエリアを限定して探した結果です。埼玉県や千葉県まで足を伸ばせばもう少し増えるかも知れません。
 彼らに共通した点は、「エンクロージャーの製作を依頼したい」と切り出すと「オーディオは経験がないので、、、」と最初は尻込みしますが、内容を話し「それ程の精度が必要な製品ではない」「納期は十分にとってもらって構わない」旨の説明したら正式な見積書を出してくれました。
 
 注文家具の業界は競争が激しく、製作工程においては、複数の扉や引き出しの精度がかなり厳しく、そして納期も厳しく管理されます。 もしオーディオ用エンクロジャー製作などを引き受けて、厳しい工作精度や納期を言われてはかなわないので、できれば受注はしたくない、というのが彼らの本音だと感じました。これさえクリアにしておけば、あとは親身になって相談に乗ってくれる様です。
 
 最後に、新SPシステムの音質そのものが、当初想定していたレベルに容易に近づけました。まだエンクロージャーにTADウーファーをインストールして数ヶ月ですが、この部屋で10年間いろいろ調整してきたレイオーディオRM-6Vを、もうすでに凌駕するレベルに来ています。
 
 この後、TAD TL1601bウーファーエージングが進み、現在内部に詰めてあるグラスウールの量を減らしていく方向で、どれくらいのレベルまで向上するのか、パラメトリックイコライザーの調整をしていくつもりです。