MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

新しいSPシステム(1)

 
 
 
 エンクロージャー内部の配線も完成し、サランネット枠も取り付けて、これで完成。 
頭の中に思い描いていた「JBL C38Baron」の面構え、、、多少なりとも実現できたな、と自分なりに満足しています。 当時のJBL純正のサランネットさえ入手できれば、すぐ交換するつもりです。
 
 上に載せた山本音響製「F-310A」は、特にサイドカーブが美しく、山本音響製ウッドホーンの中でも一番気に入っているのですが、かなり横幅が大きく(長年使って来たレイオーディオ製RH-3よりも大きい)これを上に載せると、JBL C38 Baronの清楚なイメージが崩れますが、このウッドホーンを内蔵させる事は構造上無理なので、これでOKとします。
 

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 台車に載せて、左右のエンクロージャーの前後左右の位置を合わせました。
今回の新システムがどれくらいの重量なのか、実際に測定していませんが、この部屋でレイオーディオRM6V(公称重量200kg)を動かして位置出しをしていた頃と較べると、今回はそれよりも多少は楽に調整移動ができ、また高さが低い分だけずいぶん安心感もありました。
 
 レーザー測長器を使って、±3ミリの誤差まで追い込みました。「3ミリ程度ならレーザーなんか使わなくても、巻尺でも出せるよ」とオーディオ仲間に言われそうですが、私の大雑把な聴覚には「±3ミリ」は十分な精度と言えます。 いずれ聴いているうちに前後左右に大きく位置を動かす可能性もあるだろうということにして、いよいよ音を出すことにします。
 
 音を出すと言っても我が家の場合は「DEQX HDP-4」という、いわゆるデジタル・チャンデバとグラフィック・イコライザーが一体になった機器を使っているので、まずはこれの設定から始めます。
(1)スピーカーから1000mmの距離に測定用マイクを立て、SPシステムの「F特」を測定する
(2)このデータに基づいて、クロスオーバー周波数とスロープを設定する(我が家の場合は330Hz)
(3)レベル合わせ、群遅延補正、その他の細かい補正はDEQXとPCによって自動補正される
(4)リスニングポイントに測定マイク立てて測定し、F特の測定を行なう
(5)最後に、自分の聴く音楽ジャンル及び好みの音質にするためF特の微調整を行なう
 
 以上の調整作業を行なって得たデータが下図です。(下図はJazz用の設定、クラシック用はもう少し高域を右肩下がりに設定しています)
DEQXの自動補正と自分で微調整したF特で、以前から問題視しているのが60Hzより下にある、この部屋の定在波による「大きなディップ」です。これは昨年秋まで使っていたレイオーディオRM-6Vでも同様に発生していましたが、今回は形状が少し異なっています。RM-6Vの時は、30Hz近辺にあるピークがかなり高く、このレベルをDEQXで「-8dB」程度下げても、聴感上は「-3dB」程度にしか下がらないという状態でした。おそらくバスレフ・ダクトの空洞共振による残響時間が影響していたと思いますが、今回の密閉箱では「レベルを下げた分だけ、聴感上も下がる」というリニアな印象です。
 
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 ちなみに下のF特図は、昨年秋まで我が家で使っていた「RM-6V」のデータです。
30HzにあるF特の盛り上がりは、RM-6Vの4本の太いダクトから放射される低域で、上の新システムのF特とは異なり、ダクトから放射される低周波のエネルギーが強大で、グラフィック・イコライザーを使っても抑えるのに苦労していました。
 
 ところで「2kHz以上の中高域」に目を移すと、下のF特図(RM-6V)の左右両チャンネルのTD-4001R(ホーン・ドライバー)のF特がきれいに揃っていることが分かります。昨年まで約10年間、毎日使っていた当時は気にしていませんでしたが、今こうやって「市販のTD-4001」のF特を測定してみると、レイオーディオが何十台かのTD-4001の中から選別して「ペア・マッチ」を組み、そのプロセスに高いお金を払った価値は確かにあったという事が分かりました。
 
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 これは左右チャンネルに1台ずつなので、多少不揃いなF特でもそれほど深刻な問題にはなりませんが、例えば片側1台のウッド・ホーンに2台のTD-4001ドライバーを搭載するダブル・ドライバーの場合など、片側2台で合計4台のTD-4001ドライバーのペア・マッチは、困難を極めるプロセスになりそうです。 ドライバーの特性が不揃いの場合、特に4kHz以上の高域は、見るも無残に乱れたF特になります。一度は試してみたかったのですが、やはりダブル・ドライバーは諦めることにします。
この新SPシステムは私のオーディオの「終活」として進めているプロジェクト、TD-4001のダブル・ドライバーなど考えてはいけないことを思い出しました。
 
 DEQXによるF特の微調整で、「Jazz用」「ボーカル用」「クラシック用」の3種類の設定を作り、音楽を聴きながら少しずつ「さじ加減」で設定をしていく楽しいプロセスまで来ることができました。
 
 さて次は、レイオーディオRM-6Vから密閉箱システムへの入れ替えが成功だったのか(失敗だったのか)、いつもの試聴用定番アルバムで音楽を聴きながら、確認していきます。 
  
 ちなみに、TD-4001ドライバーの4インチ・ダイアフラムは30年以上前からベリリウム製となっています。 水素、ヘリウムから始まる元素記号表の中で軽い方から4番目に位置する材質で、当時の開発チームはこの極端に軽量な材料を何としても振動板に使いたかったのでしょう。
 
 しかしドーム形状に成型するには「真空蒸着」しか方法がなく、プレスで製作できるアルミやチタン製振動板と比較して、厚みの精度が出しにくい。F特を揃えるなら他社の様にアルミやチタン、マグネシウム製振動板で生産する方がはるかに簡単ですが、ベリリウムと比べてヤング率が劣るために20kHzよりずっと下の周波数から「分割振動」が始まるとされています。 
 
 この点、ヤング率の高いベリリウムは20kHz以上までピストンモーションが可能とされていますが、精度が不揃いになるというデメリットがあります。
レイオーディオの様に、完成品をスクリーニングして精度を揃えるか、他社の様にもっと柔らかい材料で振動板を作るか。 米国JBL社の最高機種は、当初マグネシウム製の4インチ・ダイアフラムでしたが、現在はベリリウムが使われています。 どんな製造方法で作っているのでしょうか、まさかTAD社に生産委託をしているとも思えないし、、、興味が尽きません。