MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

スロー・ハンド

 

 

 チョーキングとフィンガー・ヴィブラート、、、ファズやワウワウ・ペダルを駆使して大音量で奏でるブリティッシュ・ブルース・ロック、、、ゆっくりと見える指の動きから、素早いダイナミックなパッセージを次々と生み出すサイケデリックサウンドの元祖「Cream」のリード・ギタリスト。

Slow Hand

 素早いパッセージを演奏しているのに、左手はユックリと動かしている様に見えることから「スロー・ハンド」と呼ばれ、世界中のロックギタリストからリスペクトされて50年以上、しかし全盛期からコカイン中毒とアルコール依存症に苦しみ、もうダメだろう、もう引退だろうと思っていたら、なんと「日本武道館コンサート100回目」というニュースを見て「本当に?まだやっているのか?」と驚きました。

 毎日の様に友人達と集まり、新宿の喫茶店で「Cream」のアルバムを「耳タコ」で聴いていたのは高校生の頃だけ、その後の毎回異なるメンバーで発表するアルバムは Cream 当時の強烈なノリも薄れて、だんだん聴かなくなってしまいました。

 アコースティック・ギターの「Unplugged」が日本国内でもヒットしていると聞いた時も「今更クラプトンなんか聴いてもね」とCDさえも買いませんでしたが、ウチの女房のリクエストでCD+DVDセットを買って聴いてみたら「おっさんクラプトン」も悪くないことが分かりました。

 米国で1990年代に「MTV Unplugged」というライブTV番組があり、スタジオにアコースティック楽器を演奏するミュージシャンを招いて演奏してもらう番組、時には Bob DylanPaul McCartneyJimmy Page などフォークやロック界の大物アーティストが登場しましたが、Eric Clapton の出演を収録したアルバム「Unplugged」が米国で大ヒットしてから、これが日本にも紹介される様になったとのことです。

 我が家でいつもハードバップを聴く時の様に、音量を上げて、真面目に「おっさんクラプトン」を聴いてみました。 少人数の聴衆を入れたスタジオ録音は、Jazzクラブの様な周囲の雑音もなく、オンマイクな録音ではないけれど独特のリアルな臨場感、アコースティック・ギターの音が非常に生々しい、、、。 今までは、アコースティック・ギターのオーディオ用試聴盤として「Concierto de Aranjuez / Kaori Muraji (96kHz)」を使っていましたが、今後はこの「Unplugged」が使えそうです。

ただ Eric の声は相変わらず、、、Cream 時代から彼はこの程度の声質。

例えば Elvis Presley の様な、豊かな声量でドスの効いたテノール/バリトンではないし、John Lennon や John Fogerty (Creedence Clearwater Revival) の様な、少し高めでハリがある声でもない。全盛期から麻薬漬け、アルコール依存症、「ギターの神」とか「三大ロックギタリスト」とか呼ばれる輝かしい名声とは対局の暗い過去があるので、声が枯れているのは致し方ない、まあEric の声はこの程度、、、決して美しい声でないのは昔から同じです。

しかし、Muddy Waters や Howlin' Wolf をリスペクトし、Robert Johnson を師と仰ぐEric だったらこれでも結構イイじゃないか、と考えれば「おっさんクラプトン」もなかなか味があって楽しめます。

 アコースティック・ギターの試聴盤CDとして使い始めてからもう10年以上、これだけの販売数を誇るアルバムだから、きっとSACD盤も発売されるだろうと待っていましたが、一向に新発売の情報はありませんでした。 アコースティック・ギターだから広い帯域もダイナミックレンジも特に必要ないから発売されないのかも、、、と半分諦めていたら、Mibile Fidelity SACD盤「Unplugged」の音源を友人からを譲ってもらいました。

 我家では Mibile Fidelity社から発売されたSACDは、今までもBeatlesMiles Davisのメジャー・タイトルを収集して来ました。 この会社独自のリマスター工程を経て、いずれも素晴らしい音楽性を持ったアルバムでした。 毎回が限定数の頒布なので、常にアンテナを張っていないと見逃してしまいますが、今回は友人のおかげで、幸運にも「Unplugged SACD盤」のハイレゾ音源が入手できました。

今年からRoonを始めたので、Tidal のハイレゾ音源と、このSACDからリッピングした「Unplugged」のハイレゾ音源の比較試聴、近々やってみるつもりです。

 

 

 

スクリューの締め付けトルク値

 

 

 自分の気の向いた時に書いている備忘録を兼ねたブログですが、時々、遠方のオーディオマニアの方からの書き込みがあったり、外国人が質問をして来たりします。

先日も書き込みがあって「TAD 1601b ウーファーの締付けトルクはどれくらいが適正でしょうか?」という、私と同じTADユーザーからの質問でした。

ブログのコメント欄ではスペースが足りないので、後でメールで詳細説明をしました。 

自分の現役時代の知識はまだ少しは覚えていますが、あと数年もしたら「締め付けトルクって、、、?」という悲しい状態になっている可能性も考えられますので、自分の備忘録も兼ねて、今回これを書いておこうと思います。

 結論から述べると「TAD 1601b ウーファーの締付けトルクは、1.5 N・m〜3 N・m 」、これ以上は締め過ぎと理解すべきです。 これはスクリューが「M5 並目ネジ」で、バッフルの材料がアピトンやバーチなど硬い合板の場合です。

 オーディオマニアにとって、ウーファーの取り付けスクリューの緩みは気になるので「できるだけ強く締めておく」という意見は、オーディオ仲間でも多い様です。 10cm〜25cmくらいのウーファーなら「付属の木ネジ」でも十分かも知れませんが、30cm以上の口径になると、爪付きTナット、あるいは鬼目ナットを使います。 我家で約10年間使って来た Rey Audio RM-6V はアピトン合板製で「鬼目ナット」が使われていましたが、このハイエンドSPシステムに使われていた鬼目ナット(亜鉛合金製)は、いささか脆弱でした。

 爪付きTナットも鬼目ナットも「ステンレス製」の製品が市販されているので、サビを嫌う人はステンレス製を選んでも良いのですが、スクリューの材料とは異なる材質を選んで使う必要があります。TADやJBLには黒色(クロモリ製)スクリューが使われていますが、これをステンレス製M5スクリューに変更する場合、特に高トルクで締め付けると「カジリ (Galling)」が発生し、最悪の場合、まるで溶接された様に緩めることができない事態を引き起こします。スクリューと鬼目ナットは必ず「異なる材質」の製品を使う必要があります。

「締め付けトルク値」に関しては、ネット上にある「JIS 締め付けトルク一覧表」を参照すると思います。ネット上のトルク一覧表には「基準T系列」だけしか記載されていない場合もあるので、これでは少々情報不足と言えます。

下記の一覧表は、用途別のトルク値が記載されたものです。

昭和世代の人は「kgf・cm」が馴染み深いですが、現在では SI系単位の「N・m」が標準です。 10.2 をかければ旧来の「kgf・cm」に換算できます。

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締め付けトルク表

この一覧表をどう読めば良いのか、というと、、、

 一番左側にある「基準T系列」は、スクリューを締めた時の「軸力」トルク値ですが、これは「どんな材料を締め付けるのか」は考慮されていません。 それを明確に規定しているのが右側に記載されている「0.5系列」「1.8系列」「2.4系列」です。

「0.5系列」は電気系の部品(プリント基板、プラスチック部品、銅、アルミ等の部品)向けのトルク値、「1.8系列」は自動車関連の鉄製部品(エンジン、ブレーキ等の部品)、「2.4系列」は建設関係の部品用の基準トルク値です。

 オーディオマニアが知っておくべきSPユニット向けの推奨値としては、木製バッフルに15インチウーファーを取り付ける時のM5スクリューの場合は「0.5系列」の「1.5 N・m」が正解です。締め付ける材料が「アルミフレーム+木材バッフル」であることから、1.5 N・m〜3 N・m を許容範囲としておけば大丈夫です。  

 機械工学的にいうと、スクリューを回わすことによって、軸(全長)方向に伸びが発生し、これが縮まろうとする力(弾性)によって緩みを防いでいます。しかし全長の短いスクリューの場合は伸び代が少ないため、対策としてスプリング・ワッシャーを入れて軸方向の伸び(弾性)の代りにしています。

SPユニット用のスクリューの場合は(バッフルの厚みが100mmもある様な場合を除き)伸び代となるべきスクリュー全長が短く、スプリング・ワッシャーもないので不利な状態です。木製バッフルにある程度の弾力があるので、規定トルクで締めていればスプリング・ワッシャーの役目をしてくれますが「できるだけ強く」で締めてしまうと、この弾力も失われ、その結果、緩みやすくなってしまいます。

強く締め過ぎたために木製のバッフルが厚み方向に圧縮され、これが一年後には圧縮されたまま元の厚みに戻らない状態(塑性変形)になっているのが原因、、、回転方向に緩んでいるのではなく、実際にはバッフルの厚みが圧縮されて薄くなってしまったのが原因と考えられます。(スクリュー頭とバッフルに1本線を引いておけば、回転方向に緩んだか否か、一年後に確認できます) ちなみに、前述の「1.5 N・m」の様な、弱いトルクで締めておけば、一年経過しても緩みません。

一年後に確認し「何となく緩んでいる気がする」という程度の緩みの場合は、ネジ緩み防止剤LOCTITE(ねじロック222)を使っておけば完璧です。この場合、必ず「低強度」を使うことが必要で、「中強度」以上を使った場合は二度と緩められなくなる危険性があります。

正確な締め付けトルクを求めるなら、トルクレンチが一般的ですが、車のホイールを締める場合ならともかく、オーディオ用途では使い方によってはウーファーの振動板を傷める危険性があるので「トルク・ドライバー」の方が推奨されます。 プロ用は1万円程の価格ですが、一年に一回使う程度なら差し替えドライバーの先端に取り付ける「トルク・アダプター」で十分です。

 世間のオーディオマニアに「スクリューが緩む原因は?」と問いかけると大方は「ウーファーの振動」と答えると思います。しかし、38cmウーファーの振動板(質量100g程度)が大音量時に±3ミリ程の短いストロークで発生させる振動エネルギーで、M5のスクリューが緩むことは考え難いと言えます。

自動車部品を例にすると、重量が 1 kg 程ある「ピストン+コンロッド」が、70〜90ミリの長いストロークで激しく上下し振動する車のエンジン、あるいは1個の重量が 10 kg を超える「タイヤ+ホイール」の路面からの振動衝撃を保持するサスペンション、これらと比較すれば、大音量時のウーファーの±3ミリ程度の短いストロークによって発生する振動は、非常に弱い「微振動」に過ぎず、M5スクリューが緩む可能性は極めて低いと言えます。

 アピトン合板の様な重く硬い木材を使っている場合のスクリュー緩みの可能性は、、、アピトン合板とバーチ合板の比較をしてみると、比重はアピトン合板が「0.78」バーチ合板が「0.72」でほとんど同じです。 木材の硬度は、おそらくブリネルの類の硬度計で測定すると思いますが、自分で木材を硬度測定した経験はないので「アピトン合板の方が硬い気がする」としか言えません。(丸ノコで切断している時に、その様に感じられます。)

ネット上で、アピトン合板やバーチ合板のヤング率や圧縮強度のデータを探してみましたが、発表されていたのは国産材、及び住宅建築用の柱などに使う目的の木材だけでした。

 なお、強いトルクで締めた場合と、弱めのトルクで締めた場合、これら2つのケースの「音質の違い」の評価は、オーディオマニア諸氏の試聴記を楽しみに待ちたいと思います。

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木材の強度データ(林材協会連合から抜粋)

 

 

 

 

前壁を石井式壁構造に改造(3)

 

 

 寒いのが嫌いなDIY大工は、冬の冷たい北風が吹いているとモチベーションが下がります。曇天の寒い日は、角材を1本切るのにも庭に出るのをためらってしまうし、少し疲れて来るとすぐに休憩してコーヒーを一杯、そのままJazzを聴き始める、、、そんな気ままなDIY大工なので一向にペースは上がりません。

 それでも何とか気持ちを奮い立たせ、15ミリ厚のラワン合板を取り付けて行きます。 今回は角材の寸法が「45x45」で、32kgグラスウールの厚みが「50ミリ」なので、多少(5ミリ程)グラスウールが圧縮された状態になります。

 当初は、低域のエネルギーを吸収させるなら多少でも隙間を空けてグラスウールの動きがあった方が良いのではないか、などと考えましたが、石井さんの本には「グラスウールを押し(ダンプ)気味にし、15ミリ厚の合板の共振を防いだ方が良い」との記述があったので、それに従うことにしました。

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合板の取り付け

1層目の合板の取り付けが終わったら2層目、そして3層目の合板を取り付けて行きます。
タテヨコの方向を変え、位置をズラし、合わせ目が重ならない様に、振動モードを分散できる様に(気持ちの問題?)と、3x6合板を合計12枚、全部使い切ってのレイアウトです。

一般的に、3x6ラワン合板の概略重量は「厚さ1ミリあたり1 kg」で計算をします。 今回の場合は1枚が15kg、12枚合計で180kgになりますので、音響用の壁としてはまずまずの重量です。

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1層目、2層目そして3層目のレイアウト



 

 

 

 

前壁を石井式壁構造に改造(2)

 

 

 「間柱」の仮組みで木ネジの位置の確認、角材の変形が修正(軽減)できたら、これらを一度全部取り外して、グラスウールの取り付けを行ないます。

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胴縁方向にグラスウールを取り付け

 胴縁(水平)方向にグラスウールを取り付けた後、次は取り外してある間柱を再度、取り付けて行きます。 前工程で角材の変形を仮組みして修正してあるので、今回は以前より容易に取り付けが完了、、一応想定どおりに進んでいます。

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間柱の再取り付け

 間柱を取り付けた後、いよいよ最後の工程、間柱(縦)方向のグラスウール取り付けです。

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縦方向のグラスウールの取り付け

 石井さんの説明では、「胴縁だけ」の吸音特性よりも「間柱だけ」の方が優れているとのことでしたが今回の「新・石井式吸音壁」の設計では、この胴縁と間柱の両方を組み合わせた構造となっていて、外壁側の「遮音壁」と室内側の反射壁に挟まれた狭い空間に低域の波動を導いて、効率的に振動エネルギーを減衰させる機能があるとのことです。

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低音吸音の動作(「リスニングルームの音響学」より抜粋)

 

 間柱(縦)方向のグラスウールの組み込みが終わり、グラスウール作業から、やっとこれで手が離せます。 

エンクロージャー内部に入れる柔らか目のグラスウールより、硬めの32kgグラスウールの方がチクチクとした皮膚への不快感が少ないのは不思議です。(前回、QRD Abuffusor(パーティション型吸音板) を製作した時も、やはり同様に感じました)

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間柱(縦)方向のグラスウールの組み込み完了

 



 

 

前壁を石井式壁構造に改造(1)

 

 

 コロナ禍の影響でオーディオ仲間とはZOOM等でバーチャル・オフ会はするものの、実際の訪問は遠慮していてお互いに刺激がない、だからオーディオ機器の入れ替えもほとんどなく、ここ2年位の間は以前よりずっと平穏な状態、一人でJazzをただ聴いているだけの状態です。

 現在のオーディオルームは、2010年に半年程かかってDIYで完成させたもの、当時はまだルーム・アコースティックについては「聞きかじり」程度の乏しい知識しかなく、2014年に出版された石井伸一郎氏の「リスニングルームの音響学」を何回も読んで少しは知識を増やしました。 「遮音」と「吸音」しか構想になかったレベルから多少は成長し、中高域は吸音せずに反射、中低域は吸音、最低域は残響時間を延ばす、というサーロジック村田さんのコンセプトも理解でき、現状よりもっと音を良くできるはず、と考え始めました。

 石井伸一郎氏の「リスニングルームの音響学」を読んで一番興味を持ったのは、低域の吸音に関しての記述「石井式の壁構造は、幅の狭い開口部から入った音波が横(長手)方向に進んで吸音されるために、ぶ厚い吸音材と同様な吸音特性を示す」という点、低域の吸収に有効なのは吸音部分の、面積ではなく「長さ(奥行き)」が必要である、という点です。

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石井式壁構造(「リスニングルームの音響学」から抜粋)

 以前、Rey Audio木下さんから聞いた話では、Rey Audioが設計したモニター・ルームに隣接して、100cm 程の厚み(奥行)のグラスウールをギッシリ詰め込んだ「吸音ルーム」を設置するとのことで、これは石井さんの説明(吸音部分の奥行き)と共通点があり、低域を吸収するにはグラスウールの「浅く広い面積」でなく「深い奥行き」が必要であると理解しました。(最低域の振幅のピークからノーダルポイントまで、1/2波長と同等以上の奥行きがあれば、これが一番効率的に吸音される、これを「石井式壁構造」は壁の長手方向に応用したという意味で、優れた設計だと思います)

我家で10年間、実際にRey Audio RM-6V を使って来て、12畳程度の容積の部屋で40cmダブルウーファーを使いこなすのは難しいことは理解できました。手元にデジタルEQ(DEQXとTORINNOV)があるので、これらを使えば、周波数特性は容易にフラットにできるのですが、データ的にフラットにしたからといって必ずしも「良い音」にならない、EQでは伝送特性は補正できても残響特性の補正が出来ないから、電気的に補正する前に「物理的、音響的に処置」しておく必要があります。

そこで、以前からぜひトライしてみたかった改造プロジェクト「石井式壁構造への改造」に着手することにしました。 最近は丸ノコやルーターなどの木工用電動工具は、全く使う機会もなかったのですが、今回は久々のビッグ・プロジェクト、、、これで当分の間、楽しめそうです。

 正面の壁を石井式壁構造に改造するため、まずは表面に貼ってある檜材を取り外すことから始めました。(新規に檜材を発注することも考えましたが、10年間でとても良い色にエージングした檜材は何物にも代えがたい、側面や天井の桧材との調和も考慮し、できるなら丁寧に剥がして使いたい、もし取り外す時に割れてしまったら、その時は諦めて新しい檜材を発注することにして、とにかく始めてみることにしました)

 建設当初は、この檜材を木工用ボンドでガッチリ貼り付けていくつもりだったのですが、この家を建ててくれた大工さんに聞いたら「天然の木材は乾燥していく過程で変形していくので、ボンドでガッチリ貼り付けると変形に対応するニゲがないため、割れが入ってしまう。 だからサネ釘で止めておくのが一番おススメ」とのことでした。 サネ釘で止めただけで大丈夫なんだろうか、、、しかし大音量時に共振することはなく、今回の「取り外し」にも対応できた、、、さすが大工さんです。

 壁から檜材を丁寧に、一枚ずつ取り外して行きます。貼り付けた当時はまだ製材して間もない状態だったので、反りが発生する恐れもありましたが、約10年間貼り付けたまま自然乾燥したので、もう反りが発生する心配はありません。 最終工程で再び取り付けるのに備えて、一枚ずつ順番に番号付け、位置を書いて管理していきます。

 

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檜の取り外し

 無事に全部の桧材の取り外しが終わって、次は45x45の角材の「胴縁」を取り付けて行きます。 本職の大工さんなら2、3日もあれば余裕で終わる仕事だと思いますが、気分が乗らない日は全然やらない、疲れて来たらすぐに休憩、、、ひ弱な根性のDIY大工なので3週間もかかってしまいました。(新品を買ったのに、45x45の角材の変形がヒドイです)

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最初に胴縁を取り付けていく

 胴縁の次は「間柱」の取り付けです。

工程の順番としては、胴縁だけの状態でグラスウール(水平方向)を取り付けて、その後「間柱」を取り付けますが、まずは「間柱の仮組み」です。

近隣のホームセンターで購入して来た45x45の角材はかなりに変形しています。(製材した状態で、店内のラックに放置してあったからです。6本組、8本組にしてキッチリ縛り付けた状態が望ましいらしいです。) 合板で製作するエンクロージャーの様な、あまりワザも必要としないシンプルなDIYとは違い、変形した角材を強制的に修正しながら仮組みしていく工程が必要、これがかなり手間のかかる作業でした。こういった変形の多い材料を、平然と手際よく何の問題もなく組み上げていく現場の大工さんのワザを思い出すと、本当に感心します。 

 DIYの楽しみは何と言っても、自分で設計し発注し準備する、自分でやる作業そのものが楽しい、完成時に味わえる達成感が素晴らしい、、、だからお金を支払ってまでこの楽しみを業者にやらせることはないと思ってやっていますが、エンクロージャーにウォールナットの無垢材を貼り付けての最終仕上げ工程とか、重い天井板や壁板を取り付ける作業とか、やはり業者に任せるべきだったか、、、と感じる場面も時々はあって、こういう場面ではプロフェッショナルな人々へのリスペクトが湧き上がって来るのも、DIY大工ならではと思います。

今回、家屋の構造材である胴縁と間柱の工事を初めて自分でやってみて、現場の大工さんの苦労と偉大さを実感しました。

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間柱の仮取り付け



 

 

 

Village Vanguard が復活!

 

  

 最近はオーディオ機器の買い替えもなく、現在はオーディオルームの前壁を「石井式サンドイッチ吸音構造壁」にするDIY工事で忙しい(?)ため、録画予約をしたまま観るのを忘れていた、BS-NHKの11月下旬放送「What a wonderful world 分断と闘ったジャズの聖地」を数週間遅れで楽しみました。 

 アメリカ全土がパンデミックに襲われ、マンハッタンにあった60余りのジャズ・クラブすべてが閉鎖されてから一年以上が経過、現在ではいくつものクラブが何とか営業再開したが、最も古い歴史を持つジャズ・クラブの老舗「Village Vanguard」は閉鎖されたままの状態でした。

 1935年に創業されたこの Village Vanguard はマンハッタンの7番街、店舗が地下にあるのでコロナ対策に必要な換気用の窓など一つもなく、換気設備の増設もままならない、このまま今後も営業の再開は難しいのではないか、と心配されていました。

 しかし三代目のオーナーと関係者の情熱によって、昔からの店内の壁や天井を保存しつつもコロナ対策に必要な換気設備を追加して、2021年9月14日に営業が再開されたとのこと、この店には過去一回しか行ったことがない自分としては「これでまた行ける」と嬉しい限りです。

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 この店を訪れたのは1999年12月、表通りからは幅の狭い赤いドアを開けて階段を降りて行くと、そこがジャズの聖地 Village Vanguard でした。店内は暗く、黒っぽい壁には50年代のジャズ全盛期にこの店で演奏した著名なジャズ・プレーヤー達の写真が直筆のサインとともにディスプレイされていました。

店内は狭く天井も低く、50cm程度の高さしかない狭いステージの上に立ってみると、John ColtraneBill EvansSonny RollinsMiles Davis など歴史的な演奏者達がこのステージの上で演奏したんだな、と考えるだけで鳥肌が立ってくる思いでした。来年かその次の年になるのか、パンデミックが沈静化したら、再度この店を訪ねてみようと計画しています。

 日本では「Village Vanguard」という店名を知らない人も多いですが、「Waltz For Debby / Bill Evans」はオーディオファンには良く知られた「耳タコ」アルバムの一枚です。

 Waltz For Debby と同日に同じメンバーで録音された「Sunday at the Village Vanguard / Bill Evans」があまり話題にならないのは不思議ですが、オーディオファンが好きな「地下鉄の音」も入っています。 ここでの演奏の約一週間後、Bill Evansのお気に入りベーシスト Scott LaFaro が交通事故で他界してしまったということから、主に Scott LaFaro をフィーチャーしたアルバムがこの「Sunday at the Village Vanguard / Bill Evans」なのかも知れません。

この他にも「Live at the Village Vanguard / John Coltrane」「A Night At The Village Vanguard / Sonny Rollins」など、Rudy Van Gelderのレコーディングによる独特のサウンドとリアルな臨場感は良く知られているところです。

 古くからのジャズ狂の作家、村上春樹氏が彼の旅エッセイの中で、「ニューヨークを訪れた最大の目的は Village Vanguard のオーナーと会うこと」と書いていましたが、彼の様なジャズ歴の長い人にも、やはりこの店はジャズの聖地。

ちなみにネット上で「村上春樹氏の書斎」を検索してみると、彼の膨大な数のジャズLPのコレクションと、早大の学生だった頃に彼自身が経営していたジャズ喫茶で使っていたSPシステム(JBL 375+D130+バックロードホーン)を現在も愛用している、という写真がありました。

 

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村上春樹がプライベートな書斎を公開。これが仕事ができる男のデスクだ。 | netgeek

 

 

 

 

DEQXがUSB接続されない

 

  

 低域をさらに改善しようという目的で「グラスウール32 kg/m3(寸法:1800 x 900 x 50厚)」が合計10枚(5枚組/セットx2箱)届きました。現在、大きな梱包が2個、オーディオルームに置かれています。 

開梱する前に眺めていたら、今までこんな大きな寸法の吸音パネルの類を製作したこともないし購入したこともなかったので、これでF特や残響時間がどのくらい変化するのか、どの様な影響/悪影響があるのか、設置場所をいろいろ変えたりして測定をしてみよう、と思いつきました。

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32kg グラスウール 2セット

 この様な実験的な計測には、常用しているTRINNOV ST-2 よりも、以前から使い慣れているDEQX HDP-4の方が好適なので、久しぶりに接続をしてみました。 

いつもの様にDEQXソフトウェアを立ち上げて、、、と見ると「Not Connected」が赤く表示されたままになっています。 DEQXの再起動、PCの再起動、別のUSBケーブルに交換、、、などいろいろ試しましたが「Not Connected」のままでUSB接続されません。

自分で解決するのを諦め、DEQX HDP-4をチェックしてもらうために軽井沢の総輸入元に送り返しました。 しかし翌日に「何も問題ありません、正常です。」とのメールが来て結局、DEQX本体には問題がないことが分かりました。

 それではUSB接続ができないのは何が原因なのか、、、考えているだけでは何も進まないので、天板を開けてケーブルのチェックをしていたら、もう一通メールが来ました。「DEQX設定用のUSBドライバーがあるか、確認して下さい。」ファイル名は「PDC 2-6」でディレクトリは「C:\Program Files (x86)\DEQX\」とのこと。

DEQXの計測時以外は使っていないWindows10のディレクトリを開き、「PDC 2-6」を探してみましたが、どこにも存在しません。 「なぜ、ないのだろう? 捨ててしまったのか?」と記憶の糸をたぐり寄せているうちに「やはり捨てたかも、、、」と考え始めました。 Windows7からWindows10に上げる際、不要なファイルを整理したので「PDC 2-6 なんて、HDP-4の以前の旧型機種名」と考えて捨ててしまった可能性もあります。

結局、DEQXソフトウェアを再インストールしたら、今度はUSB接続も正常に戻り、確かに「C:\Program Files (x86)\DEQX\」ディレクトリには「PDC 2-6」がインストールされていました。

(以前の旧型機種と同じ名前「PDC 2-6」などという紛らわしいファイル名でなく、もっと他の名前にして欲しい、、、と考えているのは、世界中で自分だけかも知れません。)