MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

前壁を石井式壁構造に改造(1)

 

 

 コロナ禍の影響でオーディオ仲間とはZOOM等でバーチャル・オフ会はするものの、実際の訪問は遠慮していてお互いに刺激がない、だからオーディオ機器の入れ替えもほとんどなく、ここ2年位の間は以前よりずっと平穏な状態、一人でJazzをただ聴いているだけの状態です。

 現在のオーディオルームは、2010年に半年程かかってDIYで完成させたもの、当時はまだルーム・アコースティックについては「聞きかじり」程度の乏しい知識しかなく、2014年に出版された石井伸一郎氏の「リスニングルームの音響学」を何回も読んで少しは知識を増やしました。 「遮音」と「吸音」しか構想になかったレベルから多少は成長し、中高域は吸音せずに反射、中低域は吸音、最低域は残響時間を延ばす、というサーロジック村田さんのコンセプトも理解でき、現状よりもっと音を良くできるはず、と考え始めました。

 石井伸一郎氏の「リスニングルームの音響学」を読んで一番興味を持ったのは、低域の吸音に関しての記述「石井式の壁構造は、幅の狭い開口部から入った音波が横(長手)方向に進んで吸音されるために、ぶ厚い吸音材と同様な吸音特性を示す」という点、低域の吸収に有効なのは吸音部分の、面積ではなく「長さ(奥行き)」が必要である、という点です。

f:id:MilesTAD:20220128204722j:plain

石井式壁構造(「リスニングルームの音響学」から抜粋)

 以前、Rey Audio木下さんから聞いた話では、Rey Audioが設計したモニター・ルームに隣接して、100cm 程の厚み(奥行)のグラスウールをギッシリ詰め込んだ「吸音ルーム」を設置するとのことで、これは石井さんの説明(吸音部分の奥行き)と共通点があり、低域を吸収するにはグラスウールの「浅く広い面積」でなく「深い奥行き」が必要であると理解しました。(最低域の振幅のピークからノーダルポイントまで、1/2波長と同等以上の奥行きがあれば、これが一番効率的に吸音される、これを「石井式壁構造」は壁の長手方向に応用したという意味で、優れた設計だと思います)

我家で10年間、実際にRey Audio RM-6V を使って来て、12畳程度の容積の部屋で40cmダブルウーファーを使いこなすのは難しいことは理解できました。手元にデジタルEQ(DEQXとTORINNOV)があるので、これらを使えば、周波数特性は容易にフラットにできるのですが、データ的にフラットにしたからといって必ずしも「良い音」にならない、EQでは伝送特性は補正できても残響特性の補正が出来ないから、電気的に補正する前に「物理的、音響的に処置」しておく必要があります。

そこで、以前からぜひトライしてみたかった改造プロジェクト「石井式壁構造への改造」に着手することにしました。 最近は丸ノコやルーターなどの木工用電動工具は、全く使う機会もなかったのですが、今回は久々のビッグ・プロジェクト、、、これで当分の間、楽しめそうです。

 正面の壁を石井式壁構造に改造するため、まずは表面に貼ってある檜材を取り外すことから始めました。(新規に檜材を発注することも考えましたが、10年間でとても良い色にエージングした檜材は何物にも代えがたい、側面や天井の桧材との調和も考慮し、できるなら丁寧に剥がして使いたい、もし取り外す時に割れてしまったら、その時は諦めて新しい檜材を発注することにして、とにかく始めてみることにしました)

 建設当初は、この檜材を木工用ボンドでガッチリ貼り付けていくつもりだったのですが、この家を建ててくれた大工さんに聞いたら「天然の木材は乾燥していく過程で変形していくので、ボンドでガッチリ貼り付けると変形に対応するニゲがないため、割れが入ってしまう。 だからサネ釘で止めておくのが一番おススメ」とのことでした。 サネ釘で止めただけで大丈夫なんだろうか、、、しかし大音量時に共振することはなく、今回の「取り外し」にも対応できた、、、さすが大工さんです。

 壁から檜材を丁寧に、一枚ずつ取り外して行きます。貼り付けた当時はまだ製材して間もない状態だったので、反りが発生する恐れもありましたが、約10年間貼り付けたまま自然乾燥したので、もう反りが発生する心配はありません。 最終工程で再び取り付けるのに備えて、一枚ずつ順番に番号付け、位置を書いて管理していきます。

 

f:id:MilesTAD:20211230182206j:plain

檜の取り外し

 無事に全部の桧材の取り外しが終わって、次は45x45の角材の「胴縁」を取り付けて行きます。 本職の大工さんなら2、3日もあれば余裕で終わる仕事だと思いますが、気分が乗らない日は全然やらない、疲れて来たらすぐに休憩、、、ひ弱な根性のDIY大工なので3週間もかかってしまいました。(新品を買ったのに、45x45の角材の変形がヒドイです)

f:id:MilesTAD:20211230182256j:plain

最初に胴縁を取り付けていく

 胴縁の次は「間柱」の取り付けです。

工程の順番としては、胴縁だけの状態でグラスウール(水平方向)を取り付けて、その後「間柱」を取り付けますが、まずは「間柱の仮組み」です。

近隣のホームセンターで購入して来た45x45の角材はかなりに変形しています。(製材した状態で、店内のラックに放置してあったからです。6本組、8本組にしてキッチリ縛り付けた状態が望ましいらしいです。) 合板で製作するエンクロージャーの様な、あまりワザも必要としないシンプルなDIYとは違い、変形した角材を強制的に修正しながら仮組みしていく工程が必要、これがかなり手間のかかる作業でした。こういった変形の多い材料を、平然と手際よく何の問題もなく組み上げていく現場の大工さんのワザを思い出すと、本当に感心します。 

 DIYの楽しみは何と言っても、自分で設計し発注し準備する、自分でやる作業そのものが楽しい、完成時に味わえる達成感が素晴らしい、、、だからお金を支払ってまでこの楽しみを業者にやらせることはないと思ってやっていますが、エンクロージャーにウォールナットの無垢材を貼り付けての最終仕上げ工程とか、重い天井板や壁板を取り付ける作業とか、やはり業者に任せるべきだったか、、、と感じる場面も時々はあって、こういう場面ではプロフェッショナルな人々へのリスペクトが湧き上がって来るのも、DIY大工ならではと思います。

今回、家屋の構造材である胴縁と間柱の工事を初めて自分でやってみて、現場の大工さんの苦労と偉大さを実感しました。

f:id:MilesTAD:20220128215356j:plain

間柱の仮取り付け