MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

コンプレッション・ドライバーのフェイズ・プラグ(1)

 
  

 久しぶりに千葉の「GTサウンド」を訪問して来ました。 私のメインSPシステムである Rey Audio RM-6V を購入する前には、一時期GTサウンドのシステムを検討したこともありました。しかし長い間「いつかは Rey Audio を、、、」と頭の中で思い描いて来たこと、そしてヴァーチカル・ツイン特有の「点音源」への思い入れもあり、最終的に RM-6V を購入しました。

 TADやSONYの様な超弩級4インチのコンプレッション・ドライバーは、パイオニアソニーの様な大企業が数億円単位の予算を計上して磁気回路やダイアフラムの基礎研究を行なって開発設計をした製品なので、一介のオーディオ販売店や個人のマニアが開発できる様な技術レベルではありません。しかし、いわゆる大メーカーの「タテマエ」によるコストの問題からか、「あと2、3万円高くなっても良いから、ここはプラスチックでなく砲金製にして欲しかった」というような部分が見受けられることがあります。

「GTサウンド」のユニットの魅力は、少量生産のメリットを生かし、SONY製のユニットをベースにして、こういったオーディオ・マニアの視点から小改良が加えられ、今でもそれが継続されていることだと思います。

 GTサウンドが販売している最新の4インチ・コンプレッション・ドライバーのカットモデルが展示されていたので、じっくりと観察し、質問してみました。随所にプラスチックから砲金あるいは真鍮への材料のグレードアップが施されていて感心しました。 しかし、TAD 4001が最初に開発し、5年後に発売されたSONY製のユニットでも踏襲されて「トゥイーター不要のワイドレンジ・ドライバー」として「5スリットのフェイズ・プラグ」が必須のスペックであったはずです。 

それが「4スリット」に変更されていたので驚きました。

f:id:MilesTAD:20190911202728j:plain

GTサウンドのドライバー(HPから抜粋)


 数世代前のJBLの375や376、あるいは2441や2445は「4スリット」であったため、どうしても10kHzあたりから高域がロールオフし始め、とても20kHzまでは届かなかったのはすでに周知の事実です。しかし、TD-4001 からは高域限界を「20kHz」とスペックに表示し、SONYのドライバーも同様のスペックにできたのは、困難とされていた「5スリット」の開発に成功したからだと認識していました。

 JBLの375の場合は、9kHz以上が急激に減衰していてそれ以上はほとんどレスポンスが無く、よってイコライザーで持ち上げようとしても持ち上がらない、という高域特性で、7kHzから上は075トゥイーターをうまくつないで、あの往年の「JBLサウンド」を形成していたと思います。 しかし、376からは、ダイヤモンド・エッジと称するエッジの共振を利用して9kHz以上の高域を持ち上げ、ロールオフしながらも何とか12kHz辺りまで出していたのが現実でした。 

私も375の後、数年間376を愛用していましたが、高域が多少でも延びたことは認めるとしても、375の「ズ太い」中低域が薄れ、全体的に「線が細くなった」という印象は否めませんでした。

 その後、砲金のスペーサーを製作して376のダイアフラムを2446用の「チタン」ダイアフラムに変更したことによって、多少「太い中低域」と多少「延びた高域」を得る事ができましたが、当時の専門誌などで評論家の皆さんが絶賛するTD-4001 は「5スリット」であるとのこと、「なるほど、やはり4スリットのフェイズ・プラブでは、ここら辺りが限界かな、、、」というのが実感で、いよいよ「TD-4001」の導入をプランし始めたのでした。