MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

金田式DCアンプとハイエンド・オーディオ(1)

  
 

 日本のオーディオ産業がまさに最盛期に入ろうとしていた1970年代前半、真空管アンプからトランジスタ・アンプへの移行期でしたが、依然としてその音質は芳しくなく、一般普及クラスはトランジスタ、ハイエンドは真空管アンプ(Marantz #7、Macintosh MC-275など)というクラス分けがあった時代でした。

 その時代に突然、無線と実験誌上に「B級、Non-NFB、トランジスタ製」の金田式DCアンプが登場しました。それまでのアンプとはまったく異なった音質に、当初の評価は決して高くなかったようですが、1年もしないうちにその音質は高く評価されるようになりました。 当時まだ高校生だった私は、すぐに飛びついて製作を始めるようなお金があるはずもなく、無線と実験誌を買うお金も節約するために、近所の図書館で無線と実験誌を借りて来て「金田式DCアンプ」の記事を毎回楽しみに読んでいました。

 私は都内に通っていた高校の帰り道、3日と空けずに秋葉原に遊びに行っては「憧れのJBL」参拝と部品街歩きをしていました。買うお金もないのに細かいことを質問し「今度は何つくるんだ?」とノグチトランスのオヤジさんに言われ「金田式DCアンプです」と答えたのを覚えています。実際にオヤジさんからトランス(タムラではなく安価なタンゴ)を買ったのはそれから2、3年後のことでした。

 アルバイトをして貯めたお金でも、タムラのトランスと鈴蘭堂のシャーシは高くて買えず、安価なタンゴのトランスとアルミ・シャーシで組み立てた自分にとって、記念すべき最初の金田式DCアンプ、それが部屋で音を出した時、自作の真空管アンプ(50CA10pp)とは全く異なる音に驚かされました。音量を上げて行っても少しもうるさくならない、左右のスピーカーの中央からその背後にかけて回り込む様に展開される3次元的な奥行と臨場感。 当時、近所にあって週に2回は「参拝」しに行っていたジャズ喫茶「Funky」のJBLサウンドとも全く異なる、何が違うのか的確に表現できなかったけれど、大切に所有して来たすべてのレコードの音が今までと全然違う、まったく「新しい音」が自分の部屋で再生できるようになったのです。