MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

本当のマスター・テープの音を聴きたい!(1)

 
 まだ「30cmLP」が自分の再生音源だった頃は、Swing Journal 誌の推薦盤や優秀録音盤を毎月少しずつ購入し、レコード・プレーヤーも SME-3009トーンアームとShure V-15、ターンテーブルはSP-10 MK2を「アルミ+鉛+合板」のプレートに取り付けた、自分としてはかなり「頑張った」つもりのアナログ再生システムで聴いていました。 その頃、幸運にも2トラック38cmのマスターテープ(サブあるいはサブーサブ・マスター?)を借用して試聴する機会を得ました。

 当時、自分の部屋で使っていたテープデッキは、TEAC社のA-7030という、2トラ38と4トラ19の両方が再生できる機種でしたが、2トラ38の音楽テープなど買う予算はなく、もっぱら4トラ19の再生だけに使っていました。だから、2トラ38のアルミ製リールをセンタークランプで固定し、音の入っていない空テープを早巻きして「風切り音」を楽しんでいたのです。

 初めての「2トラ38の音楽テープ」を丁寧にかけ終わり、「さぁて、どんなイイ音がするだろう、、、」という期待を込めて「Play」ボタンを押すと、大きなアルミ製リールが「速巻き」と見間違える程の速さで回転を始めました。3、4秒程の間、小さなテープ・ヒスが聴こえた後、「2トラ38」のサウンドが、自分の JBLシステムから流れ始めました。

 ゆっくりと静かにピアノ・トリオのイントロが始まった瞬間、自分の部屋の空気が録音スタジオの中にワープしたような、録音された時のスタジオの空気感と完全に同期したような、何とも言えない感動を覚えました。 ベース・ソロの後、ドラム・ソロが始まり、バスタムの一撃が入った瞬間、愛用のJBL D130がクリップするのではないかと思える程のアタックが飛び出して来て「おおっ、スゴイッ!これが2トラ38!!、、、」と、強烈な衝撃を受けたことを覚えています。

 それに比べると、30cmLPの音のなんと弱々しいことか、、、、それまで優秀録音ということで好んで聴いていたアルバムでさえも、「2トラ38」のサウンドを聴いた後では、まるで「AMラジオの音」のように聴こえました。 レンジが狭く、音楽に全く活気がない、だから感動もない。 それでも、2週間もすると2トラ38の衝撃と感動は消え去り、また元の自分の耳に戻って、30cmLPでも十分満足して聴くことができるようになってしまうのでした。

 その後は、CD主体のオーディオとなり、ゴールドCDやSHM-CD、、、やはりXRCDは音が全然違うよな、などと言いながら完全にCDの世界に浸り、CD再生でオーディオを楽しんで来ました。

 しかし2年前、知人宅で偶然に聴かせてもらった「96kHz/24 bit」のフルレート・サウンドは、30年以上前に「2トラ38」のサウンドで受けた衝撃に勝るとも劣らない、私にとって2度目の大きな衝撃でした。 それは、もう二度と取り戻せない過去の時間、その瞬間だけの素晴らしいアドリブを収めた1本だけの貴重なマスターテープ、その「マスターテープに入っている音を全部聴きたい」という自分のモチベーションが高まり、フルレートの音楽データでオーディオ(PC Audio)をやってみようと決めた瞬間でした。