MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

オーディオ彷徨(岩崎千明氏の遺稿集)

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 今までYahooオークションでは、CDやオーディオ機器の取引きをして来たのですが、その多くが音楽ファン、あるいはオーディオ・マニアの方々との、気持ちの良い取引きでした。 その中で、一冊の「書籍」に関して、とても感慨深いオークション取引きがありました。

 40年程前、菅野沖彦氏、瀬川冬樹、山中敬三氏らと同年代のオーディオ評論家「岩崎千明」氏が活躍されていました。日本のオーディオ熱がまさに絶頂期にさしかかろうとしていた頃です。

 当時、私はオーディオを始めて間もない高校生で、実家からすぐ近くにあったジャズ喫茶「Funky」を憧れの空間とし、もう一件、究極のジャズ喫茶が中野駅の近くにありました。それが「JAZZ-Audio」という故岩崎千明氏が経営する店でした。

 初めてその店を訪れた時は、ドアを開けたとたん、マイルスの強烈なミュートが炸裂して驚かされ、それでもドキドキしながら店の中に入り、やっとカウンター席に座りました。振り向いた反対側の壁側にスポット・ライトに照らされたSPシステム、JBLのD130プロを縦型バックロードホーン納め、スラントプレートHL-91ホーンのLE85プロが大音量で「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」を鳴らしていました。出されたグラスの水を一口飲んで、ふっと見上げると、棚の上にはJBLのグラフィックイコライザーSG520とエナジャイザーSE400、それだけで気持ちが高ぶって来て、、、目の前でマイルスを鳴らしているSPシステム、それは日頃、岩崎千明氏がステレオ・サウンド誌やスイングジャーナル誌で推奨していたジャズ・サウンドを熱く鳴らす、Jazz専用のシステムでした。

 文面からダイレクトに伝わって来るJBLへの大いなる情熱と羨望、読んでいる私にオーディオへの多大なモチベーションを与えてくれた岩崎氏の文章は後年、氏が夭折した際に「オーディオ彷徨(岩崎千明氏の遺稿集)」という一冊の書籍として出版されました。 発刊早々に購入したこの本は30年以上の間、私のオーディオルームの本棚に置かれ、この本がそこにあるだけで、何か私に安堵感を与えてくれていたのです。 

 しかし、私のオーディオも変遷を重ねてJBLを卒業し、レイオーディオRM-6Vを導入した頃、この本はもう自分には不要かな、、、と感じてオークションに出品しました。(なぜか、出品した後で後悔しましたが、すでに入札が始まったので観念しました。)

 しかし、この本を落札して下さった人は偶然にも、私が「JAZZ-Audio」へジャズを聴きに行っていた頃のお店のマスターでした。彼はその頃、岩崎千明氏邸に寝泊まりし、お店のマスターをしていたとの事でした。 落札後のメイルのやりとりで、引越しの時にこの本を紛失し、完全に再入手を諦めていたところ、私の出品を見つけて入札したということ、そして何よりも、お互いが全く顔を知らない関係にありながら、岩崎氏の「JAZZ-Audio」という店で時間を共有していた時期があった、という事実を知りました。

 1990年代、16歳の頃から使っていたというマウスピースをマイルス・デイビスが紛失した、というニュースがありました。 私は本件の「書籍」の取引きで、このマウスピース紛失事件を思い出しました。「オーディオ彷徨」の本が元マスターの手元に渡ったというのは、例えば、私が偶然マイルスのマウスピースを発見し、それを無事にマイルス・デイビスの遺族に送り届けたのと同じだな、という感慨がありました。

 最終的に、あの「オーディオ彷徨(岩崎千明氏の遺稿集)」の本は、私の本棚から、この世界で最も望ましい場所に保管されることになったのだ、と考えると、私にとってこのオークション取引きは、とても有意義な、思い出深いものとなっているのです。