MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

Jonathan Paul Ive

   

 アップルのほとんどの製品のデザインを手掛ける「Jonathan Paul Ive」。彼は、Macintosh のシンプルなコンセプトに共感してアップルに入社、しばらくの間PowerMacなど中庸なデザインをしていた頃、あのCEOスティーブ・ジョブズがアップルに戻って来たのです。 以前のCEOには「色彩が派手すぎる」と酷評されてラボの片隅に押し込まれていた「色の付いたiMac」。 これをスティーブが見つけ、「すぐに製品にしよう」と発表したのが、あのボンダイ・プルーの「iMac」。半透明のプラスチックとカラフルな色調を使ったこの可愛いMacintosh は、他の家電製品や文房具など、他業種の工業デザインにも大きな影響を与えた大ヒット商品となりました。 
 
 その後、チタン材を使った「Power Book」、裏面を鏡面仕上げしたステンレスの「iPod」、ガラス面をタッチして操作する「iPhone」や「iPad」、そしてアルミのムク材から削り出したボディ/シャーシを持つ「Mac Book Air」や「Mac Book Pro」など、どれも「シンプルで美しい製品」を強く指向するスティーブ・ジョブズのコンセプトと極限のミニマリズムへと突き進むアップル社の開発ポリシーとに命を吹き込んだ、とても美しいデザインでした。

 そのジョナサン・アイブがスティーブ・ジョブズの追悼式で行なったスピーチを、YouTubeで観ることが出来ます。 単に「売れる製品」を開発するのでなく、どうしたら「美しく素晴らしい製品」を作ることができるか、彼ら二人が常に葛藤していたことが伺い知れます。 ジョナサン・アイブはイギリス人英語でゆっくり話すので、彼のスピーチはとても分かり易いですが、Webに日本語訳が出ていました、これの方がもっと分かり易いです。

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 スティーブはよく私に言ったものだ、それも一度や二度ではない。「ヘイ、Jonny。くだらんアイデアだが、、、。」 確かにくだらないアイデアもあった。 しかし時には、部屋中がシーンとして、2人とも完全に言葉を失ってしまう程の素晴らしいアイデアもあった。 大胆かつクレージー、目立たずにシンプルで、その繊細さの中に実に深いディテールが姿を潜めているアイデア

 新しいアイデアを愛し、モノ作りを愛したように、その創造的プロセスにも スティーブは稀に見る畏敬の念をもって接していた。 最終的にはアイデアが強力なものになり得るとしても、初めは脆弱でほとんど形をなさないものであり、たやすく見失ったり、妥協され易く、押しつぶされやすいものであることを、彼は誰よりも深く理解していたのだ。

 私は一生懸命耳を傾ける彼の姿が好きだった。彼の感受性、際立った繊細さ、外科手術的ともいえる鋭い意見が好きだった。私は心底信じていた。彼の非凡な直感力と鋭さには美的なものさえ感じられると。

 皆さんがよく知っているように、スティーブの卓越したセンスはモノ作りだけに限られない。 以前よく一緒に旅行をした頃、私はチェックインを済ませて自分の部屋に入り、、、しかし荷物はドアのところに置いておく。 荷は解かないまま、私はベッドのそばの電話の傍らに座るのだ。 そして必ず掛かってくる電話を待つ。「ヘイ、 Johnny、このホテルは最悪だな。 もう出ようぜ!」

 誰の目にも見られることのない製品の裏側のデザインにさえもこだわって、数ヶ月も目の回るような忙しさを共にしてきた。 誰かの目に見えるからではない。我々がそこまでやったのは、それが正しいと信じたからなのだ。

 結果として、必然的でシンプルなものに見えて欲しい、しかしそれには必ず犠牲を伴う。何よりも スティーブがいちばん犠牲を強いられたのだ。最も心を砕いたのは彼だ。いちばん気を揉んだのは彼だ。 彼は絶えず問い続ける、「これでいいのか? これで正しいのか?」と。 すべての成功と成果にも関わらず、すべてを達成したとは決して認めない。 アイデアが出ないとき、プロトタイプが失敗したとき、彼は断固としていうのだ。いずれすばらしいものを造り出せると信じていると。

 達成したときの喜び!  スティーブの情熱と、無邪気に喜ぶ姿を見るのが私は好きだった。そうだ、とうとうやったんだ!  ついに我々はやってのけたんだ。彼の笑みが目に浮かぶ。 みんなのために素晴らしいものが出来たことを祝う。 シニシズムは敗北し、言い訳は拒否する。何百回となく「そうじゃない!」といわれたことも否定する。これこそ美と純粋さに対する彼の勝利の証しなのだ。

 彼は私にとって最も親しく、最も信頼できる友人だった。15年近く仕事を共した。この二週間、どう別れをいえばいいのか悩んできた。「Thank you, Steve」という言葉を今朝の結びの言葉にしたいと思う。 あなたの素晴しいビジョン、並外れた能力を持つ人々をAppleに集め、鼓舞してきたことに対して感謝を捧げたい。あなたから学んだすべてのこと、これからもお互いに学び続けることに対して。 

Thank you, Steve.・・・