MilesTAD’s Blog

自分の一生涯の趣味として続けているオーディオのブログです。

ウーファー用エンクロージャー(1)

 
 
 
 5月初旬に完成するはずだった「TAD TL-1601b 用エンクロージャー」はスケジュールが大幅に遅れています。
 最終的に届いた「見積書」が自分の見積もりを遥かに超える程の高額だったこと、そして納期まであと10日という日になった時点で、さらに二週間も遅延するとの連絡が入って、結局この発注はキャンセルしました。
 設計、発注、日程/工程管理まで、やはり何でも全部自分でやるのが一番、、、自分で再設計し直して図面を作成し、複数の木工会社に見積もり依頼をすることにしました。
 
 今回のエンクロージャーは、今まで10年間使って来たレイオーディオRM-6Vと比べれば半分程度の大きさ、「820幅 x 720高 x 720奥」の寸法、内容積は「約300リッター」、「厚さ40ミリのバーチ材」を使い、十分な補強材を入れて総重量は約100kgです。重量がもう少し軽ければ自分でも十分に製作が可能な手頃なサイズと言えます。 
 特注家具の製作をしている木工会社であればSPエンクロージャーの経験がなくても十二分に製作は可能、むしろ特注家具の木工会社の方が「工作精度」に関してはより高い技術を持っています。つまり製作依頼する方の設計と図面、そして行程指導の進め方次第ということになります。
 
 お金だけ払ってあとは全部お任せという様なオーディオ・ファンではないので、毎日の様に製作工程を見に行きたい、現場の職人さんと会話をしたい、それを実現するために、車で1時間以内のエリアで探すことにしました。
 
 幸い、八王子、相模原周辺は「特注家具」を専門とする木工会社が多く、よって競争も厳しい、きっとリーズナブルな見積もりが出るだろうと目論んで、片っ端から木工会社に連絡を取って訪問しました。
「今までSPエンクロージャーは製作したことがない」と尻込みする木工会社もありましたが、「少し厚くて重い材料を使っているだけ、構造も工作精度も特注家具より難易度は低いですよ」と説明して見積もりを出してもらいました。
 
 合計7社からの見積もりは下記のとおりです。
(見積もりは「組立と塗装」の工賃のみ、バーチ材は当方から直接支給するという条件です)
 
イメージ 1
 
 1番目のFW社と2番目のYG社は、各々別個の会社ですが、2社ともほぼ同じ見積額となっています。これは偶然ではなく、各工程時間が正しく計算され、精度の高い見積もりを出して来ている証拠です。
 3番から5番目の会社の見積もりも、各々別個の会社であるにも関わらず、組立工賃が揃って「12万円」であることは、工程時間が正確に計算されていることが分かります。「1時間あたりの工賃」が上位2社と比べて少し高いのだと思いますが、3枚の図面だけを見て見積もりを出して来たこれら6社の見積もり時間が揃っているのは、競争の厳しい特注家具の業界で生き残っている企業だけあって、さすがだと思いました。
 
 (塗装の工賃については、自社内で塗装行程まで行なえる会社の場合と、協力会社(外注)に依頼する場合とで差異があります。) 
 
 7番目(一番下)のYM社だけが「オーディオ専門」の業者。最初から非常に高い見積もりを出して来た木工所です。上位2社と比較すると3倍以上の額になります。 塗装の工賃も非常に高く24万円、これは自動車のボディ1台分の塗装工賃よりも高いです。
 オーディオ業界では注文家具業界の様な厳しい競争がないのか、この様な高額な見積もりでも何とかやっていけるのかも知れませんが、私は切り捨てました。
 
 最終的に1番目のFW社に製作依頼することに決めたのですが、ただ単に見積額が安いというだけでなく、この会社は全行程に「NC制御の木工ルーターや丸ノコ」を使って製作している点、非常に信頼性があるのが理由です。寸法精度に関しては、オーディオ業界の木工所の前時代的な手作業とは雲泥の差であることは明白です。
(NCルーターといえば、私の敬愛する山本音響工芸は、1990年代からNC制御の三次元ルーターを導入してウッドホーンの生産をしています。先見の明と先進的な技術力は賞賛に値いします。)
 
 上記7社の他に、シナアピトン合板で長岡スピーカーを製作している会社2社にも見積もりを依頼したのですが「半年先まで忙しくて引き受けられない」とか「大型エンクロージャーは場所がないので製作できない」などと断られました。
 その他にも特注エンクロージャー専門の業者に見積もりを依頼してみましたが、驚くほど高額でした。密閉箱で約100万円、バスレフの場合は15%増しとのこと。「15万円のバスレフ・ダクト」がどんなものか、一度見てみたいものです。
 
 オーディオ専門の木工所は、きっと経営者が「巨匠」、「芸術家」なのかも知れません。私は、チェロやコントラバスの製作を依頼しているのではなく「工業製品」としてのSPエンクロージャーの製作見積もりを依頼しているのですが、1時間あたりの賃率をいくらに設定しているのだろうか、と考えたくなる様な高額な見積もり。 この様な高額な見積書を出して来る様では、若い世代のオーディオ・ファンが育つはずもない、、、オーディオ業界の凋落は、さらに今後も続くだろうと思わざるを得ませんでした。
 
 TADウーファーは6月末の納品、そして肝心のエンクロージャーは7月第1週の納品と決まりました。あと1ヶ月で音が出せるはずです。 50年間オーディオをやって来て、今まで「密閉箱」は一回も製作したことはないので、一体どんな音が出るのか、良い音が出て欲しい、きっと良い音が出るに違いない、、、不安と期待が入り混じった数週間です。
  
 
 
 

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